ホドロフスキーのDUNE

Documentary

素晴らしいスタッフやキャストなどを揃えて、完成すれば超大作となるはずであったDUNE。
しかし、あまりにもこだわりと情熱の高かったその映画は、コストもとんでもない規模となり、結局完成させることができなかった幻の大作。
後にデビッドリンチが映像化して上演まで漕ぎ着けたが、もしホドロフスキーのが完成していたら映画史を大きく変える狂気に満ちた壮大な作品となったかもしれない。。。

ホドロフスキーにとって映画とは、商業的な興行である前に、一つの芸術の表現技法であり、規定概念を打ち崩すための手段であるようだ。

これはそんな彼の軌跡と、映画にかける思いと、そんな彼に惹かれて一緒に作り上げようとした同志たちの熱い思いが詰まったドキュメンタリーである。

撮影の直前で頓挫したため、実際の映像は存在しない。
映画については絵コンテやキャラ、衣装画などのコンセプト画の2Dのみで表現されるが、イメージは十分に伝わってくる。

どんなに素晴らしい技術を持った第一人者であっても、実際にあって見て『魂』を感じる戦士ではないと感じれば、躊躇なく切り捨てるいさぎよさ。
ピンと来たそれぞれの技術者や、役者を情熱をもってあきらめずに口説きまくる姿勢は頭が下がる。

プロデューサーのミシェル・セドゥを相棒に、
絵コンテやキャラデザインにメビウス(後にホドロフスキーと漫画を出版する他、エイリアン、トロン、アビス、フィフス・エレメント等映画のSFデザインを手がけた)
建造物デザインにはH・R・ギーガー(後にエイリアン等で有名に)
宇宙船デザインにはクリス・フォス
SFX技術はダン・オバノン(スター・ウォーズ、エイリアン等)
音楽はピンク・フロイドとマグマ

役者には
主役のポールには、ホドロフスキーの息子ブロンティス・ホドロフスキー(このためにストイックなアクション修行を積まされた)
銀河皇帝にシュルレアリスムの巨匠サルバドール・ダリ
(このダリとの出会いと駆け引きの証言もかなり面白い。ダリの変人ぶりも凄まじいので(笑)
ハルコンネン男爵には、大御所のオーソン・ウェルズ
ハルコネン男爵の甥フェイド・ラウサにはローリング・ストーンズのミック・ジャガー

この映像を見て伝わってくるのは、ホドロフスキーがどれだけ変人で、どれだけの情熱に突き動かされて、スタッフそれぞれの才能を信頼して、しかもやる気を引き出す天才であったか。
どれだけ人たらしで初対面の人間をも惹きつけるカリスマ性を持っていたか。
そして、驚くべき運も「持っている」人だったのだなと。

やばい、めちゃくちゃ面白そう。凄い観たい!!
間違いなく長く心に残る傑作となり、SFの金字塔として後世まで語り伝えられた作品になっただろうと思われるのに、、、

そう。唯一彼が持っていなかったのは、商業としての映画業界からの信頼度。
それ以前に作った映画がマニアックだったのと、妥協を許さない時間と金額にたいする壮大さが受け入れられなかったんだね。
「監督が彼でさえなかったら。。。」というような話がちらほらでてくる(--;)
いや、このしっかりしたプロットと、デザインと、普通でてくれないような役者がOKを出したのを見たら、少なくとも話題作にはなったはずなのに業界の見る目も甘かった時代なのかもと。

結局この後めぐりめぐってデヴィッド・リンチ監督に話が回って無事完成、公開までこぎつけたわけだけど、スケールはかなりコンパクトに、12時間以上でも足りないかもとホドロフスキー監督が言っていたにも関わらず、137分の手ごろな上映時間。
多分世界観も全然描き切れていないと感じたんだろね。ホドロフスキーは大失敗作と述べている(デヴィッド・リンチ監督の才能自体は認めていたので、作り方に不満があったのだろう)
また、ホドロフスキーと共に作ろうとしていたスタッフは、このデヴィッド・リンチ版を見る気もないし、絶対見たくないという人もいる。
「ホドロフスキーのDUNE」はそれだけの夢も乗せていた未完の大作なのだな。

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