書を捨てよ町へ出よう

Artistic

寺山修司さんによる演劇実験室「天井桟敷」の実験的なアングラ映画で元々は演劇作品として上演されていた。
はい、一筋縄ではいかないパッと見てストーリーや共感が得られる代物ではないものです。
かなりとんがっていて、むわっと噎せ返る様な青臭さも感じる映画。

訛りのきつい若者が、タバコを吸いながら映画館でみている観客に語りかける1人芝居のようなモノクロ状態から始まる。

緑に染ったリングと、サンドバッグを打ち込みをする若者と、壁の落書き、破れたポスターなどが映し出され、重なる歌声と、罵声が響き渡る。

ああ、これは映画と言うより演劇の舞台だなと感じられる。
シュールレアリスム的な表現と前衛的な表現手法でかなり抽象的な演出。
これは見る人を選ぶかもしれない。

ちょっと歪な家族構成。
万引き常習犯で勝手な婆さん
戦犯で無職で無気力な父
人嫌いでうさぎを溺愛する妹
その口調から家族に対してどこか嫌悪感というかやり切れない鬱屈したものを抱えているのが伺える主人公。
(父のセリフが棒読みで、まったく肉親らしくも見えないのも演出なのか?)

街を疾走する緑1色の激しいぶれ場面と、人力飛行機のピンクの場面が交差する。
急に場面は切り替わり、昔っぽい女性のアップと男臭いサッカー部のロッカルーム

裸で無邪気に大騒ぎするもの達と、部室の片隅で新聞読みながらタバコを吸いまくる若者たち。

燃える星条旗、全裸で睦み合う男女、政治家のお面で踊る、軍の石碑、大量に散らかったタバコの箱、麻薬、南無法蓮現況と書かれたサンドバッグを吊るす。どもりや赤面対人治療の看板。
小汚いビルにある娼館は、汚いおかまやシワシワのおばあちゃん、病的女など怪物屋敷のようだ。
童貞喪失時に流れるBGMは般若心経とすすり泣きでこのシーンがまたしつこいほどに長い( ̄▽ ̄;)

正直時間軸的なストーリーの流れなどというものはあまり期待してはだめ。(でもちゃんと大筋の流れはある)

狂気と死体。他人のせいにする大人。
狭い部室のシャワールームで輪姦され続ける妹の姿は、まるでハイティーン・ブギの桃子のようだった。

鳴り響く自転車のベルは、自分の無力さへの激しい叫びのようだ。(このシーンはぐっときた)

この時代を生きる若者たちの鬱憤、やりきれなさ、ぶつける場所の見いだせない怒りともどかしさ、カオスとかした社会。溢れる若さ。もてあます性。罪と暴力。
大人たちの自分勝手な不条理。

街の落書きや看板、挟み込まれる歌、つづられた一編の詩などサブリミナル効果のように気になる文字がちらちらと浮かんでは消えていく。
最初は反社会的な学生運動を表現したものなんだなと思って無駄に長いな~と見切りそうになったが、後半になるにつれていや、ちょっと違うな、、、と面白くなっていく。

確かに映像だからこそ出来る表現というのもあるが、この作品は演劇の舞台で見たかった気がする。

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