ザ・ショートフィルム・オブ・デイヴィッド・リンチ

Artistic

私は「デイヴィッド・リンチ・ワールド DVD-BOX」を購入したので、その中に入っていた1作品集

Bitly

学生時代に作られた実験作や未公開短編など。
メニューが凝った作りになっているのも見所。
本人によるイントロデュースがついているので、どのようにして作品が生まれたかを知ることができる。

ストーリーのしっかりした「映画」ではなく、閃を形にしたコンセプトアート的な非常に短い作品集。

ただこれを見ると、この人の頭の中はどうなってるんだろう?と。
狂気と紙一重の鬼才ぶりが伺える。
見ている方が頭がおかしくなりそうな、理解の域を超えた感覚的なものばかり。
シュールレアリスムだよなこれ。

ストーリー的な完成度としてはなんと言ったら良いのかわからんので、誰もが楽しく面白く見られるとは言う自信はない。
ただ私はこれを見て一層デビッド・リンチがメチャメチャ好きになりました(⌒▽⌒)
想像を超えた感覚を持つ人だな。

Six Figures Getting Sick (Six Times)(3分55秒)
学生時代の作品で、映画ではなく、パラパラ漫画風の前衛的なアート。
素描で描かれた3人の男性と、少しずつ形や向きなどが変わる3人の男性の絵。
時おり内蔵の異常や吐く様子などが入り交じり「sick」という文字が現れる。
それがループで繰り返され、ひたすら流れ続けるサイレンがノイローゼになりそうだ。


The Alphabet(3分44秒)
同じく徐々に画面に絵が現れてくる。
元々風景に紛れるように書かれていたアルファベッドの文字の周囲に隣合わせの文字が絵の続きを描くように浮かんでくる、まるで子供の歌番組のよう。

そこまでは可愛らしくもあったが、白塗りの女の顔のアップや犬の鳴き声、不気味なアート、のたくる女と流れる血などとアルファベットを唱える歌や子供の声などが重なり、まるで悪夢そのものに(笑)勉強ってそんなに怖い?

しかし、この作品からアメリカ映画協会製作助成金を受けることができるようになり、リンチの映画人生が始まったと言ってもよさそうですな。


The Grandmother(33分55秒)
管から突き出す口と、ロケットのように地中から発射される女。
枯葉の積もる地面から湧き出す人々。
絵画とコラージュ的なのと実写映像が組み合わされた変な世界。

場面は一変し、闇と太陽とおねしょ?と白塗りの少年と両親の世界になり暴力的な表現も追加される。基本無声で不気味な効果音や口笛だけが響く。
今で言う育児放棄と虐待の家庭から逃避するように、優しい「おばあちゃん」を自分の布団(唯一の彼の空間?)で植物のように育成していく。

ここは時間の流れや、話の流れがきちんと(?)あって、後のデビッド・リンチワールドを彷彿させるような映像の奔流が観られて興味深い。
メリエスの月世界旅行や、ダリのアンダルシアの犬などを彷彿とさせるようなとこもある。
この映画で後まで映画の音響効果を担当するアラン・スプレットと出会うんだね。


The Amputee(8分55秒)
イレイザーヘッドの制作中に資金が尽きて行き詰まっていた時に、アメリカ映画協会がストックの2つの白黒ビデオの違いをテストしたがっていたので作成されたらしい。
同じ映像を2回映し出している。
大きな椅子に、両足を失った女性がもたれてタバコを吸いながら 何か手紙のようなものを執筆している。その浮気の疑いと釈明みたいなことを延々と読み上げる中、看護師が治療を続けてるように見えたのだが?、、、ん?モノクロでもわかる違和感が(笑)


The Cowboy and the Frenchman(25分50秒)
ブルーベルベットの後に作られた。
外から見たフランス人という構想で5人の監督が短編アンソロジーの番組に選ばれたようだ。
ん?他の人は誰だったんだろ?と気になったので調べてみたら
ヴェルナー・ヘルツォーク(グリズリーマン等) 、アンジェイ・ワイダ(灰とダイヤモンド等)、ルイージ・コメンチーニ(伊コメディ系)、ジャン・リュック・ゴダール (勝手にしやがれ等)と各国にまたがったなかなかの顔ぶれであった。

で、リンチがどんな作品を出したかというと。。。
耳の悪い1人のカウボーイと仲間が佇む農場。
森の中からよろめきながら現れたきちんとした身なりの紳士。
その出会いは、、、なんだかコメディ。
インディアンに自由の女神にワインにフランスパン、、、カバンの中から出てくるはずもない物が出てくる出てくる(笑)
途中までは時代も背景も無視したドタバタコメディだと思ったが、異文化の交流を表しているのだろうが脈絡なく歌あり踊りありの意味不明な状態に。
リンチってこんなのも作ったりしたんだなという異色な短編。


Lumière(57秒)
リュミエール兄弟によって発明された新しいフィルムでワンカット撮影の55秒の映像を作るという試み。
モノクロの怪しい雰囲気の世界。あっという間に終わります。


個人的にはやはり「The Grandmother」が結構おもしろかったです。「Six Figures Getting Sick」もなんかめちゃめちゃ頭に残る。。。
これ見ると各国の映画館で上映された作品たちがどれだけわかりやすく、きれいに展開もまとめられたものだったかと。
まあ「イレイザーヘッド」は初期ということもあってかこちらにかなり近いですがw

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