是枝監督作品で、ある殺人事件における裁判を舞台としたミステリー?
人気のない夜の土手で、一人の男の後ろからついて行った男が、背後からスパナで殴りつけてさらに絞殺。死体にガソリンをかけて燃やした。
現場には十字架の形の焼け跡が残されていた。
。。。という一見顔見知りによる残虐な殺人事件の様子から始まる。
犯人である三隅(役所広司さん)は直ぐに確保され、自白供述もしてムショ入り。彼には過去にも前科があった。
しかし、犯人は証言の内容がコロコロと変わり、何を聞いてもあやふやで、特に後悔してる様子もなく、減刑を願っているようにも見えない違和感。
生来の嘘つきなのか、精神的におかしいのか、何かを隠しているのか。。。
主にこの犯人弁護を請け負った側の立場から話は進む。
実務的でいかにもやり手で優秀っぽさが滲み出ているクールな弁護士である福山雅治さん(重盛)。
弁護士の仕事は真実を突き止めることではなく、被弁護人にできるだけ都合よく円滑に裁判が進められ、結果的に判決で勝てば良いという割り切りのスタイルを通しており、今までも敢えて依頼人の心に踏み込もうとはしなかった。
そしてことなかれ主義で、形式的に裁判を滞りなく進めようとする裁判に関わる弁護士、裁判官、検察官それぞれの立場。
しかし、事件について調べていくうちにどうしても腑に落ちないモヤモヤが高まっていき、だんだんと人間の深層について取り組む姿勢が変わっていき、真実に近づいていく。
重盛の家庭環境のさまざまな問題もそれに絡んでくる。
犯人の方も最初の飄々とした感じから、核心に迫るにつれて感情が現れ始め変わっていく。
それには被害者側と加害者側が赤の他人ではなく、実は強い関係性があったからこそ起こった事件だったといえる。
単純な物取りや、個人的な欲望や、怨恨とも違う人間ゆえの悲しさ。
誰かを守るために誰かを傷つける矛盾。
三隅という人物は確かに空虚で、自分の強い感情に基づいた行動ともいえない底知れない闇をもっているけれど、人の苦しみや痛みを驚くほど敏感に察知することのできるある意味ものすごく繊細な人なんだなあとなってくる。
頬についた血を拭う映像、十字架、贖罪の意識を彷彿とさせる映像が効果的に挟み込まれる。
判決の結果はなんともおさまりが悪く、真実もはっきりしないもやもや感が残るが、「三度目」の殺人が意味するものがまた深い。
是枝監督の作品は、いつもはっきりとした結末を提示せず、見た人に考えさせる造りになってるよね。