やはり日本人として世界の黒澤映画は見ておかないと!と思い、かなり古いが幾多の賞をとったという「羅生門」を選択。
1950年の映画で、手書き刊満載のテロップにモノクロだ。
芥川龍之介の小説 『藪の中』と『羅生門』を原作としているが、舞台背景と終盤の善悪の問いかけ以外、ストーリー内容は『藪の中』の方になっている。
『羅生門』の方は小説で読んでいたんだけど、『藪の中』はまだ読んでいなかった。
ある深い山中での殺人事件。
当事者の3人に加え、目撃者まですべての言うことがつじつまが合わない不可思議。
しかも、言い逃れではなく、当事者は死亡した幽霊(口寄せ)も含めて自分が殺したのだと言い張るという常識とは逆の展開。
事実だけを追えば
盗賊の多襄丸が山道で夫婦の旅人をみかける
↓
夫を騙して縛りつけ、その目前で妻を犯す
↓
夫がなんらかの結末により死亡
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死体が発見されて、犯人が出頭し申し開きをする
一見単純明快。
んが!この夫がなんらかの結末により。。。。。のあたりで全く話がかみ合わないのだ。
その理由は「人間の自尊心」に関わってくる問題なのであろう。
そしてそれは日本人の持つ「恥」に関する精神に根付いていると思われる。
犯罪者となることよりも深く隠したい己の心の恥部。
最後に目撃者の証言も明かされるが、それとても正直にすべてを話しているわけではない。
語り部の中に坊さんも交じっていることで、人間の持つ業について追及するような形にもなっているようだ。
崩れ果てた羅生門や豪雨などがモノクロでも迫力を醸し出している。
ただ、演技は昔ながらの大振りで芝居がかっているのと、音声が不明瞭だったり小さかったりで非常に聞き取りにくかった。
どうせなら字幕をつけてくれたらよいのになと思った。