第一次世界大戦中、オスマン帝国による強制移住および「アルメニア人ジェノサイド(虐殺)」事件を扱った暗黒歴史の映画。
アルメニアの小さな町で生まれ、医学を志す薬剤師の貧しく勤勉な青年ミカエル(オスカー・アイザック)は、コンスタンチノープルで学ぶために、街の富豪で持参金の高い娘マラル(アンジェラ・サラフィアン)と婚約した。
ミカエルはコンスタンチノープルに住んでいた叔父の家に居候して帝国医学大学に通うことになったが、そこにはバイオリニストの娘で美しい画家のアナがいた。
婚約したばかりではあったが、恋愛ではなく打算的な政略結婚であったことも影響してか、うぶなミカエルはひとめでマラルと恋に落ちてしまい婚約していることは言い出せないでいた。
しかし戦争が始まり、オスマントルコが参戦を表明すると、徴兵が始まりアルメニア人は迫害される。
強制的に理不尽な言いがかりで財産は没収され、前線に兵士として駆り出され、過酷な労働で牛馬の如くこき使われ、秘密な任務につかされて殺される。
そして、一方的な搾取と虐待に耐えきれなくなった仲間の起こした爆発騒ぎに紛れて逃げ出したところで、列車に押しつぶされそうに詰め込まれたアルメニア人たちを見つけた。。。。
ナチスによるユダヤ人弾圧と変わらないことがここでも起こっていたんだね。
こんなに似ているのに、一方はいろいろな形で表ざたにされて長年問題視されてきたのに対してこちらはあまりおおっぴらに知られていないのはなぜだろう?
民族的、宗教的な相違による異文化に対する根深い嫌悪という点でも近いと思われる。
戦争のための国民の心を一つにまとめるためのターゲットにされたというのも多分どちらもあると思う。
ユダヤ教とキリスト教は根っこが実は同じともいえるが、この場合アルメニア人はキリスト教徒でオスマン帝国はイスラム教でと一見まったく別の宗教に見える。
んが!ユダヤ教、キリスト教、ユダヤ教3つまとめて中東の創世記的な話を根っこにもつアブラハムの宗教ともいわれこれまた近似性はあったりもして。
そういや子供の頃に「あ~ぶらはむには7人の子~♬」という手遊び歌があったが、日本人にはその印象ぐらいしかないのではないか(--;)
現在のオスマンの流れをくむトルコ政府が国としての歴史的事実とは認めていないので大っぴらに批難しにくいという点もあるのだろう。
いずれにせよ同じ国を支える民なのに、他国との戦争中に同国内で迫害分裂をして国を疲弊させる行動というのがなんかしっくりこないのかもしれない。
日本にはまったくそういう事例がなかったからとは言わない。
子供の頃は授業で「同和問題」というのを取り上げられて、実生活で実感が湧かなかったのでぴんとこなかったけど昭和後半まであったというし(この場合は身分差別だが)、古事記や日本書紀も渡来系と土着の民の争いを描いたようなもんだし、古代までいかなくともアイヌの人々が差別を感じて苦しんでいたという。昨今は逆に漫画や文化保護などでクローズアップされてきているせいでそういう意識がない人も多いのかもしれないが。
結局は身近に感じることができるか、共感することができるかという部分が強く影響するのだろうな。
こういう映像や物語としてつきつけられると、人間は感情移入してしまうものだから。
ただ、同じように喜怒哀楽の感情をもち、懸命にささやかな暮らしを守りたいと望む同じ人間として、こんな不条理な苦しみはなくなって欲しいなと願う。