プラトーン

War

ベトナム戦争を新人一兵卒の立場から描いた名作ですな。久しぶりに再観。

オリバー・ストーン監督自身がベトナム帰還兵であり、実体験に基づいて脚本も書いているので、戦場の様子が英雄譚や悲惨さを強調したドラマチックな創作よりも現実感がある。
アリやヒルや蛇や豪雨など人間だけではない自然との闘いも細かいところまで表現されている。

チャーリー・シーン演じる新兵のクリスの体験する戦場。
美しくも厳しい密林の行軍と、軍内の規律と上下関係と、理不尽な弱肉強食の世界。

本来は温室育ちでエリートコースに進むことを望まれていた若者が、底辺の貧困層ばかりがこうした戦場に駆り出されている現実に疑問を持ち、現在の国のあり方を見つめ直して自分らしく生きるために志願兵としてやってきたのだが、戦場は想像以上に過酷であった。

夜討ちのゲリラの襲撃、仲間の死、罠、そしてささやかに質素に暮らしていた田舎の小さな村の人々が、抵抗さえしないまま虐殺され焼き払われる理不尽さ。
人間性を失った仲間の面白半分の一方的な惨殺。命の軽さ。

同じ軍の中でもまだ人間的な感情を失うことのないエリアス軍曹と、感情を殺して戦争マシンと化したバーンズ軍曹。
それぞれを支持する派閥と対立は深まっていく。

この映画の素晴らしい=やるせないところは、理性や人間性を保っている人ほど生きるのが厳しい地獄の世界を描き出しているところだろう。

だから狂気へ自分を駆り立てないといたたまれないところもあるし、正気に戻ったら蘇る記憶に一生苛まれて忘れることなど出来ず、薬や酒に溺れないと日々生きていくことができない人も多かったというのもあるのだろう。

正義と現実というのは状況や立場によって変わる。
戦場では優しさや思いやりが命取りになることもあるから、その場の判断で自軍が勝つために、自分が生き残るためには感情を切り捨てて決断しなければならないときもあるはず。
だからバーンズ軍曹のやり方が間違っているとも言い切れないが、苛烈な決断ゆえにやりすぎてしまうこともある。
けれど一群を率いていく統率力とカリスマ性があることは否めない。平時の軍内での仲間内の場面などでは秩序と仲間を大切にしている雰囲気もうかがえるしね。
優柔不断気味で頼りにならない誰かさんよりもはるかに適応している。

もちろん好き嫌いで言ったらそりゃエリアス軍曹に共感するさね。今は平和だし。
彼は人間的なところもあるが弱虫なわけではなく、果敢に一人でも行動できる強さも持ち合わせてるからね。
信念を持った筋の通った人だし、バーンズとのやりとりで感情的になることはあっても、そういう意味では疑っていなかったお人よしの面もあるし(--;)
あの、最後の両手を挙げて天を振り仰ぐかのように崩れていく瞬間、何を思ったのだろう。。。

今見てもやはり心に爪痕を残す映画だと思う。
結局戦争には人間の尊厳なんてものはないし、関わった者たちは精神の崩壊と悲壮感しか残らない。

しかし、映画自体は何度か見ているのだがジョニー・デップも出演していることを知り、どれだ?と探してみたがよくわからなかった(^^;)
まあ登場シーンが少ないのと若すぎて化粧もしてない少年顔だったので気づきにくい、、、(通訳役だったらしいと後でわかった)

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