怪談

Horror

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の怪談の中から「黒髪」「雪女」「耳無芳一の話」「茶碗の中」の4つの怪談話を映画化したオムニバス作品。1965年の作品なのでかなり古い。

とりあえず最初の字幕の題名と出演者の映像がひたすら長い( ̄▽ ̄;)
しかし、ポスターの見かけのようにおどろおどろしかったりそれほど怨念や恐怖を感じる内容ではなく、むしろ悲哀だとか、やるせない怒り、せつなさといったものが滲み出るアーティスティックな作品であった。

「黒髪」
小泉八雲の怪談はいくつも読んだはずだが、この話はあまり記憶にないのだが、、、
ボロボロに朽ち果てた家屋の作り込みがリアルで凄い。
貧しく慎ましやかな暮らしと、働き者で優しい女と暮らしていたある1人の武士の話。
立身出世を求めてすがる女を捨てて出立した男。三国連太郎さんめっちゃ若いーー!

その後、無事出世したらしく、男は裕福な貴族の家に婿入りを果たした。
しかし愛のない、我儘できつい妻との生活で幸福は感じられず、捨ててきた女のことを思い出す時間がどんどん増えてく一方。
とうとう昔の家に戻ってみると、さらに家屋は荒廃し、床は腐り果て、薄や雑草が生い茂り、荒れ果てた廃墟と化していた。
なのに奥の部屋には懐かしいあの女の姿が、、、とよくあるパターンだけど、最後の三国さんの狂乱ぶりが見事。

「雪女」
言うまでもなく代表的な日本の怪談で、知らない人はまずいないだろう。
吹雪に巻かれて避難した小屋で、雪女に遭遇して若い方だけ命を救われる。
しかし、絶対にこのことを他言してはならぬ、言ったら殺すと固く言い含められる。
それから1年後に「お雪」と名乗る美しい女が現れ妻となるのだが、、、

若い巳之吉に仲代達矢さん、茂作に浜村純さん、雪女に岸惠子さん。いずれも面影はあるものの若すぎる!!
岸惠子さんは、目鼻立ちのはっきりした現代的な美人ですね。
逆に菅井きんさんが晩年とほぼ変わってないことにむしろびっくり( ̄▽ ̄;)

空の色が不気味で作り物めいているが、あの時代の技術で合成写真の繋ぎ目がみえないということは、あの風景全部がセットということか?!

この雪女ではちょこっとお色気シーンも含まれてます。

(ここで実際の上映時には休憩が入るようだ。それもそのまま挿入されている)

「耳無芳一の話」
これも非常に有名な話ですねっ!
芳一に中村賀津雄さん、他にも丹波哲郎さんや田中邦衛さんなど。
田中邦衛さんも全然変わらないんだねえ。

まず源平合戦の情景がじょうじょうと掻き鳴らす琵琶の音に乗せて絵巻のごとく展開される。

壇ノ浦で滅びた安徳天皇や平家一門を祀った阿弥陀寺で、目の見えぬ琵琶法師の芳一が、和尚の留守中の夜に琵琶を奏でていると、どこからか武士らしき様子のものが現れて、「さる高貴な方」の館に招かれる。
それから毎晩、決まった時刻になると芳一を呼ぶ声がして、連れられていくのだが、決してこのことは誰にも口外してはならぬと強く口止めされる。

しかし、目が見えず日常も不自由なのに夜になると知らぬうちに出かけ、気づかぬうちに朝帰りし、日中は死んだように眠り続けてどんどん衰弱していく芳一に不信感を抱き、聞いても教えぬことからある晩寺男に後をつけさせた。

そこで見たのは、豪華な宮殿で貴族に囲まれた姿ではなく、鬼火の舞う平家一門の墓地で一人平家物語の壇ノ浦のくだりを演奏する芳一の姿であった、、、

身体中にお経を書き込む場面が期待通り圧巻(•̀ω•́ )✧
もし、書き漏らすとしたら何処か?というのも1度は考えちゃうとこですよね(笑)
そういやこれ程ツッコミどころがいろいろある怪談もめずらしいよね。

「茶碗の中」
結末のない、未完の話。
中川佐渡守(豊後岡藩主の中川久恒)が、家来と共に道中にある時のこと。
家来の関内が茶碗から水を飲もうとしたところ、その水鏡に自分ではない見知らぬ男の姿が映し出された。
何度捨てて汲みなおしてもやはりいる。
不気味ではあるがとうとう飲み干してしまった。

警護の交代で夜番となった関内が1人でいる所へ、先程茶碗に映った出現した。
式部平内と名乗るその男は、関内を見知っているようで、逆に自分に見覚えがない様子に憤慨する。
不審者として関内は切りつけるが、その度に姿は消え失せて手応えはなく壁に消えうせた。

仲間は誰も信じてくれず、翌晩、非番で家にいる時に3人の男が訪れてくる。
式部平内の手の者と名乗る彼らもどうやらこの世のものでは無いようだ。

彼らの正体と目的、関内とはどのような因縁があるのか?
明かされることな狂い出す関内。
「それから、、、」で話は終わっているらしい。
映画では独自にオチをつけている。

私が所持しているのは「怪談・奇談」(初版1990年/講談社)で全42篇収録。
最初の「黒髪」以外は全部入っていて、「茶碗の中」のナレーションも小泉八雲の著書の但書きに準じていることがわかる。

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かなり古い映画なのでもっとちゃちぃ感じになることも懸念されていたのだが。。。

確かにセリフや芝居や化粧などはCGもない時代のこと。ナレーションで導入していく方式で活動写真的な色合いが残る。
しかし、舞台セットやカメラ、映像効果などは非常に丁寧に作り込まれていて素晴らしく、無言劇のような状態も結構あるのだけれど、これが流石の名優揃いで鬼気迫る演技で引き込まれてしまう。
実際には3時間超あったらしいが、一気に見てしまったよ。

おそらく能の動きが取り入れられているのだろう。所作や歩行が無駄のない美しさが垣間みえる。

全体的に映像が幽玄の美で妖しく美しく、1話ごとの終わりの余韻が非常に長く、完成度の高いなかなか良い作品なのだが、赤字に終わったようだ。しかもこの映画の負債のせいでプロダクションも倒産してしまったとか(;´Д`)海外からの評価も高かったようなのにね。
あまり大衆向けに俗っぽい過度な演出や盛り上げ方をしなかったせいだろうか。

個人的には最初の「黒髪」が良かった。

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