「抵抗 死刑囚の手記より」近所ではレイトショーのみの短期上映でした。
第二次世界大戦中、ドイツ(ナチス)占領下のフランスのリヨンで、モンリュック監獄に投獄された主人公が脱獄を計画する話。
アンリ・ドヴィニ大佐の手記に基いて作られた、実話を元にした映画ということだ。
モノクロ映画で、セリフもあまりない。
光と影、それにさまざまな音が表現の主体であるけれども、なんとも息詰まる目の離せない映画でした。
信念をもって計画を貫き通すことの難しさや、あきらめない心の強さなどいろいろ感じることができる映画でした。
占領とは、自国の利益のために他国を踏み台にすることであり、一方的な搾取と懲罰が横行する。
「アウシュヴィッツ強制収容所」に送られた人たちに比べればまだましとはいえ、ドイツ本土へ強制労働者として送られ、奴隷のごとく働かされた人々もいたようだ。
密告や暗殺による恐怖統治がはじまり、人々はさらに不安と恐怖と怒りが高まっていく。家族や近所の人々でさえ信頼関係は脆く崩れ去っていくそんな時代。
そういえば「禁じられた遊び」もこの当時のフランスを題材にしたものでしたね。
日々、さまざまな理由で投獄されてくる人々。死刑宣告を受けた隣人。脱獄に失敗して銃殺される仲間。
なんの楽しみも希望も無く、ベッドと用便の容器がひしめくような狭く暗い空間の中で、正気を保ち続けるだけでも相当の精神力が必要だろう。
そんな中で、主人公は鋭い観察力と洞察力で綿密な計画を練り、入獄している他の人とも協力し、情報交換しながら準備を進めていく。
当然物資などろくにないし、外部とは遮断されて手紙を書くことも許されない。鉛筆一本所持してるのが見つかっても銃殺という厳しい情況。
必要なものはすべて手作りで、いかに材料を調達しどのように変形させるか、発想も素晴らしい。
作業中や、作ったものが見つかった時点でアウトだし、物音ひとつにも過敏になる様子はハラハラし通しで緊張感が漂う。
追い込まれて実行するしかないときに突如現れた人間を信用することはできるのか?果たして彼の計画は無事遂行することができるのか。。。
原題は『死刑囚は逃げた、あるいは風は己の望む所に吹く』ということで、DVD化するにあたって近いものに差し替えられたようだ。