アポロンの地獄

Historical

Salo→豚小屋→と、どうもパゾリーニ作品を見る順番としておかしい気もするが、「鬼才ピエル・パオロ・パゾリーニ 3枚セットDVD ~生誕90年特別限定セット~」の中で見忘れていた1枚。

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古代ギリシャの悲劇詩人ソポクレスの書いた有名な戯曲「オイディプス王」の物語を映画化したものだが、パゾリーニ自身を描いたものとも言われる作品である。
(「エディプス・コンプレックス」の語源にもなってるのでそっちの意味でかな?)

静かな田舎の夫婦の間に生まれた無垢な子供。
徐々に成長する幼児の乳母車と、無表情で愛情とは言い難い無機質な表情でじっとのぞき込む若い軍人の父。
そこへ突然オイディプス王の一説が流れる。
美しい母と父の閨を覗くような幼児。子供のベッドに忍び寄りその両足をわしづかみにする父。。。。
突然画面は切り替わりどうやらオイディプス王の物語へ飛んだのだなとわかる。

テーバイからの道を一人の男が豚のように幼児の手足を棒に縛り付けて運んでいく。
殺されるはずが、荒野に打ち捨てられた子供を通りがかりの老人が拾い上げ、運命のいたずらで隣国のコリントス王の元に連れ込まれて養子となる。

一応話の流れ的にはちゃんと原典に即しているようだ(物語的な時間の流れは逆)。パゾリーニゆえにもっと独特な解釈でもしてるかと思ったけど。

それにしてもなんというか、衣装が独特(゚o゚;
歴史的な検証とか無視したような不思議なファッションショーが繰り広げる感じ。

またコリントス王が、不思議なほど威厳を感じられない街角のオッサン!なんて冴えない王様だろう(笑)
いやいや主役のオイディプス自体もあまり重厚な感じはなくて、現代的で短気な若者風。

あのお告げをする巫女も狂気じみているが、それ以上にそれを聞いてる時のオイディプスがなぜかニヤニヤしてるのが怖い。
そう、この映画、変なとこでニヤニヤするんですよ((゚゚((Д))゚゚))ガクガク

その神託によって放浪が始まるのだが、少数民族の結婚式、踊る僧侶、半裸で佇む少女など古代ギリシアの叙事詩的な風景とはそぐわないような映像が多数盛り込まれる。

気が狂ったように叫びながら走るオイディプスに無言でひたすら追う兵士。
彼らは1人も顔が見えないという非人間的な描写も演出なんだろう。
スフィンクスの登場と結末も。。。。∑(゚Д゚;) えっ
なんで村人たちがあんなに恐れていたのか、だれも歯向かえなかったのか逆に謎です。

あと個人的には盲目の予言者であるティレシアスがなんとも良い味を出す役者さんだなと思った。

しかし広々とした荒野と澄んだ空の映像は美しい。

流れる音楽は雅楽っぽいものや、ケチャっぽいものなどどこかエキゾチック。
疫病で行き倒れた死体や、葬送の列をじっくりと描き出すところなどはパゾリーニらしいが、多分えぐい作品から見たせいだろう。
もとの話を知っていれば比較的流れも経過もわかるかなり大人しい平凡な作品だなーっとは思った。

最後にまた現代に戻るが、美しい母親との幼児時代の思い出ではなく、アンジェロという介添えの若くはつらつとした青年に頼り切った姿が描かれる。
オイディプス王の古代と現代でそれぞれ役者が同じなので立場も必然的に重ね合わされる。

しかしこの邦題はなんだ!?どうしてそうなった?

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