実際にいた将棋棋士である村山聖ををモチーフにして、日本将棋連盟出版部にいた大崎善生さんが書いたノンフィクション小説。
過去に藤原竜也さん主演でテレビドラマ化もされている。
実在の人物に寄せるために、松山ケンイチさんが減量ならぬ「増量」している所も見どころ。
実在の人物、実際の対戦、実際の出来事をベースにしているので、見かけだけではなく棋士の癖や表情、仕草、考えている間や投了後の細かい動き、お茶の飲み方やタイミング、指し方の手つきや動きなど、かなり細かいディテールまでこだわって再現してるらしい。
将棋会館や対局で実際に使われている会津の旅館「向龍」、鶴巻温泉の元湯・陣屋なども雰囲気そのままに舞台となっている。
あまり将棋が分からない人でも映画として十分楽しめるが、ある程度詳しい人はより何倍も楽しめると思う。
子供の頃に難病を患い、退屈な病床生活の気を紛らわす為に父親が買ってきた将棋との出会い。
何よりの宝は森信雄師匠との出会いだろう。
かなりの苦労人でプロになるまでの道のりは際どかったようだが、とんでもなく面倒見のいい人で、ダメダメな聖を影で支え続けた素晴らしい人格者。
と、いういまいち冴えないが人情的な役柄はリリー・フランキーさん似合うなぁ。
結構神経質でこだわりも強いわりに、身の回りには全く気を使わず生活は乱れ放題、髪は切らず爪も切らず、漫画大好きでゴミ屋敷のような部屋で読み漁る日々。
体が丈夫ではないのに酒呑みで、タチ悪い絡み酒で、口が悪く、コミュ症でまともに他の人と会話が成り立たない。
度々体を壊して寝込むこともあったが、将棋に対する情熱だけは激しい。
飄々とした羽生さん役の東出昌大さんもかなり寄せてきている。
見た目も似ているが、癖や対局中のしぐさや気持ちの揺れなど、めっちゃ細かいところまでよくとらえて再現しており、どれだけ羽生さんについて研究したんだろうと感嘆させられる。眼力も凄い。
必死に努力して全力で取り組んでも上がれない者と、才能があり階段を上がっていく途中であるが成し遂げるだけの時間が残されていない者。
どちらも相手が羨ましく妬ましいけどどうにもならないジレンマも痛々しい。
そして羽生さんとの交流と、命を削るような厳しい真剣勝負が魅せてくれます。
この二人の役者魂はほんと凄いね。