邦題が「ミケランジェロの暗号」なので、「ダヴィンチ・コード」っぽい謎解きミステリーかと思いきや、まったく違った。
そもそも原題が「Mein bester Feind」ドイツ語で訳すと「私の最良の敵」となるので、ミケランジェロとか暗号とか入ってないし(--;)
ずばり原題の方が内容にしっくり沿っていて、なんでこんな邦題に変えちゃったの?と思うはず。
世界大戦中のユダヤ人一族の運命の変遷と、ナチスドイツの侵攻による収容所での話が主になっている。
ある意味アンネの日記のように迫害の歴史を物語るものだが、そこまでの悲惨さや暗さを強調したものではない。
ムッソリーニ政権のイタリアと少しでもよい条約を締結しようと、ナチス:ドイツがミケランジェロの素描を利用しようと企むことが背景となっている。
が、一番の柱となっているのは、子供のころから裕福なユダヤ人の画商とその使用人の親子という関係ながら、家族同然に仲睦まじく育った二人の男の友情と裏切りのドラマ。
心から信頼して心を開いていたために家族の秘密を共有してしまったが、そのためにその親友の手によってナチスに引き渡され、家族バラバラで収容所送りという最悪の事態が引き起こされる。
そこから先も、裏切りと自分可愛さのクズ度合いに反吐が出るほどの怒りを覚えるのだが、それだけだとただ後味が悪い映画。
ああ、この人は実はずっと劣等感のようなものを抱き続けていて、それゆえに素直に信頼や愛情も受け止められなかった可哀そうな人なのかな。
奪うことでしか自分の存在価値を認めることができなかったのかな。。。とは思えども、卑屈な根性に共感はできない。
ところが、そこから思わぬアクシデントで大逆転が起こる。
今までお前がしてきたことをその身で思い知るが良い!と喝采を浴びせる痛快さがある。
。。。んが、そこでめでたしめでたしとはならず。。。。。
いい感じで裏切ってくれるので、ちょこちょこ振り回されて楽しめる。
まったく不条理でひどい話なのだが、この二人の駆け引きと騙し合いがユーモアを含んでいて、むかつくんだけど笑っちゃう。
それは結局どちらも悪人になりきれず、どこか相手を気遣うそぶりがちらほらするせいもあるかもしれない。
題名からは裏切られたが、内容的には予想を超えてかなりおもしろかった。