ポセイドン・アドベンチャー

Disaster/Animal disaster

古典的な海難事故パニックアドベンチャーの名作。
あ、これポール・ギャリコの原作だったのか!「スノーグース」「七つの人形の恋物語」はなかなか面白かったんだよなあ。。

まずは豪華客船「ポセイドン号」に乗り込んだ人々の様子が描かれるのだが、それぞれ立場や年齢や国や生活環境が違い、かなりユニークで面白い。
特に連れがいる人の掛け合いや垣間見える人生模様など、いかにもありそうでクスリと笑える。

かなり異端というか独特な解釈で僻地に飛ばされるスコット牧師
初孫の顔を見にいくところのユダヤ系ローゼン夫妻。モーゼの十戒のシナイ山にも行きたいという敬虔な信者。
雑貨店が忙しくいまだ独り身のジェームズ・マーティ。
ニューヨーク市警察の刑事マイクと元娼婦の妻リンダ。
音楽祭に行くために演奏と引き換えにただ乗りさせてもらったノニーとバンドの仲間。
まだ子供といって良い年齢のシェルビー姉弟。
横柄な造船会社のオーナーに、ボーイや船長や機関技師などのクルー。等々

操舵室での船長とオーナーの意見の食い違いに関係なく、どこかとぼけてのんびりしたムードの中、船の上で新年を迎え、パーティー会場で乾杯に沸く人々。

しかし、クレタ島沖で起こった大きな地殻変動と地震により、津波が押し寄せて来た!!

大波に煽られ、完全に180度転覆した船。上は下に下は上に。
楽しい豪華な旅は一変し、阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられる。

多数の死傷者と生き残りの人々。
ここからは生存本能に従い、適切に判断し行動したもののみが生き残れる世界。
他力本願や、自分の意思を持たないものは脱落していく。

クリスマスツリーはまさに蜘蛛の糸。
悲しい人間の浅ましさが露わにされる。

その後も徐々に浸水する中で、事故は起こっていくのだが、ただのパニックものではなく脱出劇中にも蹴り広げられる人間模様がイイね。

しかしこういう時に決断力と行動力に優れ、冷静に導こうとする牧師さんは一体なにもの?
ただもんじゃないな。

特に自分一人ならなんとかなるものも、パニックに陥りがちで恐怖に足がすくむ人たちを率いていくのは並大抵な精神力じゃあつとまらない。

自己犠牲の精神って見てる分には美しいがなかなかできるもんじゃぁない。
特に愛するわが子や家族、恋人など大切な人の為ならまだしも、初めて会った赤の他人のために命を捨てられますか?

「神は個人の願いなど聞かない」という牧師としては不思議な言動だが、次々に押し寄せる困難と、導く人、信じて従う人、人々を飲み込もうとする水など、キリスト教的な象徴がちらほら見え隠れする。
脱出までの道のりは旧約聖書っぽいのだが、終盤の牧師のセリフは「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」と叫んだキリストのようだ。

こういうパニック映画って、死亡フラグがたつ人って結構わかるものだが、これはなぜこの人が?と基準がよくわからない。選民思想ではなさそうだ。
必死に助け合って、悪いことをしたわけではない人々がさらわれる非情。だからこその最後のセリフなんだろうけど。。。

災害ものパニック映画の金字塔であるが、人間ドラマを柱にしたような構成だからこそおもしろいと思った。

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