リチャードを探して

Documentary

アル・パチーノが監督、主演、製作をこなした作品というので興味をそそられてDVD購入。

題材はシェイクスピアの「リチャード三世」であるが、舞台裏や街でのインタビュー、キャスティングの選別、日常の会話や会議風景などを繋ぎ合わせたものと、実際に演じている作品の映像が交互に現れる。

作品を作り上げるまでのドキュメンタリーであるが、アル・パチーノのシェイクスピアに捧げる情熱がぐっと伝わってくる。
「ゴッドファーザー」やセクシーな俳優の印象が強いけど、実際は映画よりも演劇界の人だったんだなあと改めて思い知らされる感じ。

世界的にも有名なシェイクスピア。
しかし舞台を見た人、読んだ人、多くの人々がたいくつでつまらないという。
一方では非常に感銘を受けた人々もいた。

そこで代表作の中でも、難解でどろどろした人間の内面が描かれてるのに上演回数が多い「リチャード三世」を独自に解釈し見つめ直して人々に分かりやすく伝えようと試みる。

ちなみにこの話は、15世紀に英国で実際に起こった内紛、薔薇戦争をモチーフにした作品である。歴史の授業ではサラッと流されるようなとこなので日本人にはあまり馴染みがないとは思うが、、、

なぜシェイクスピアは理解されにくいのか?
仰々しい台詞回しもあるが、芝居の1面だけをみて、話がわかりにくいところもあるのではないか。

まずは当時の歴史的背景や、人物の性格が形成されるまでの過程、行動の裏に潜むものなどを理解する必要がある。
その心情に迫るためには納得いくまで解釈を追求しようという熱い姿勢がうかがえる。

また、演じたことのある本場イギリスの役者や研究家のような人々へのインタビュー、シェイクスピアを舞台で演じる時の古典劇の決まり事なども明かされる。
シェイクスピアの生家なども訪れる。
撮影するための場所選びも慎重だ。

流石に名優揃いで、読み合わせの時点での感情移入や自分の役柄に対する思い入れ、理解度が凄い!
思い入れのあまりの熱さに白熱したまるで取り憑かれたような討論が繰り広げられる。プロ根性凄え(o_o)

本番の迫力はもっと凄まじく、通しでこれは見てみたいと思わせる。
確かにその台詞は深く、人間の本質を突くような鋭いものもあり面白いね。

でも、確かにそれぞれの立場や想いが見えてくるので話の流れが分かり易い。
リチャードかなりヤバい奴だね、、、
血塗られ、呪われた王位の簒奪。
恐怖と報酬で人心を思いのままに操れるという傲慢。
約束や契約なども踏みにじる身勝手。
誰も信じられず誰からも愛されることの無い孤独の闇。

そして人間である故の一抹の良心
深層に押し隠された魂の怯え

いやぁアル・パチーノは体は小さいけれど、存在感はでかいんだよねえ。
身体中から発散するオーラと眼力が半端なく、悪役やらせたらピカイチだ(๑⃙⃘°⌓°๑⃙⃘)

ラストシーンの「馬をくれ 王国をやる」
多少訳によって違いはあるものの、なんとも印象に残るセリフですな。
執念で多くの犠牲を踏み台にしてようやく手にした王国と1匹の馬がここで同価値となる?
体の不自由な彼が逃げるためではなく、まだ戦い続けるために?
もしくはこの場を命ながらえれば、国はまた取り戻せるという自信?

「これで終わりか?」「フィルムがあればアル(アル・パチーノ)はまだ撮るぞ」は面白かった(笑)

ドキュメンタリーとしての完成度はあり、これはこれでおもしろい。
でも、これで理解度が深まったからこそ、映像としての完成版がとてもみてみたい!!!

・・・・・・・Σ(゜Д゜lll)エッ!? ないの??

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