アガサ・クリスティの推理小説 の代表作を映画化した、1945年というかなり古いものだが、未だに評価が高いモノクロの映画だ。
マザー・グースをモチーフとした作品は数多くあるが、これはそのはしりの方なのかな。
ある孤島に小さな船で訪れた8名の男女。
スカーフが風に煽られ隣の人の顔を塞いだり、帽子が飛んでいったりとなんともコミカル。
到着した古びているがかなり大きな洋館には、先に使用人夫妻が到着していた。これで10人。
ところが、肝心のこれらの人々を招いたオーエン夫妻というのが居なかった、、
とにかく一気に登場人物が揃うので、誰が誰やらと誰がどの部屋に宿泊していてどう行き来できるのかなど、掴むのに時間がかかる。
しかもこの客たちはお互いに初顔合わせのようだ。この島へ来たのも初めて。
ヴェラ(オーエン夫人の秘書)、エミリー(編み物ばかりしてる女性)、ニキータ(調子の良い男)、クインキャノン(判事)、アームストロング(医師)、フィリップ(元軍人?)、マンドレイク(退役将軍)、エセルとトマス(オーエン氏に雇われた使用人で料理人の夫婦)、ブロア(探偵)
主の存在しない、初対面の不思議な晩餐で、徐々に秘密が明かされていく。
この島の名前。
並べられた10人のインディアンの人形。
そしてコミカルなようでいて実は内容は怖い10人のインディアンの歌。(様々なパターンがあるが、ここではフランク・J・グリーン翻訳版(1869年)をベースにしているようである)
しかしもう、これだけで何が起こるか想像が(笑)
ピアノを弾き終わると同時に、いないはずの当主オーエンの声が響き渡る。
それは、ここに集まった人々の隠された罪状宣告であった。。。
陰惨な連続殺人事件で、お互い疑心暗鬼になっていくのだけど、どこかコミカルでとぼけていて軽やか。ついついクスリと笑ってしまう。
あまりドロドロした感じはなく、現代のように死体もはっきり見せるわけではないので怖さはあまりない。
トリックも非常にストレートでわかりやすいし、モノクロな画面や画像の粗さなども見慣れると違和感はない。
今だからまさにミステリーの王道!限られた人数と閉鎖環境下でのよくある見立て殺人の手口と見えるが、逆にこの作品が踏み台となって似たようなトリックや構成、設定を後世に作り出したとも言える。
影響を受けたと思われる作品はたくさん輩出されているのだから、それだけでもオリジナルを見る価値はあるとおもう。
ただラストはちょっと、原作を知らなくとも[あ、これは変えただろ!]と思うようなベタな演出になっていたなぁ。
。。。と思ったら実はこれ、1943年にイギリスで戯曲化された時にアガサ・クリスティ自身が改変して脚本を書いたものに則していたんですね。
小説とは違うがアガサ・クリスティの書いた同名作品ではある。と。(ーー;)