タルコフスキー生誕80周年記念映画祭の続きで。うっかり1週「ノスタルジア」は逃してしまったけど。。
この作品も2部にわかれているのですが、すごいなと思ったのが、2部に入る直前まで正直何が起こっているのか?、何をしようとしているのか?この人物はいったい何者なのか?どういう展開なのか?さーっぱり掴めなかった(^^;)
「ストーカー」と言っても、人をつけまわすあれとは違ったもので、隠れて密かに潜入する案内人みたいなもの。
ただ、霧と、水と火と、、、タルコフスキーワールド全開といった感じはあります。
とくにこの作品は光の影のコントラストが非常に強く、薄暗い場面も多くて最初は何を映し出しているのか判別つかなかったほど。
水に関しても、今回は「水面に映り込む影」と「水中」にかなりこだわってますなあ。
また、生命力を感じる手つかずの自然の中に埋もれるような廃墟が見事な異彩を放っている。
カメラワークも、音の使い方も、映像効果もおそろしく独特。
最初はモノクロなのかカラーなのか判断しにくかったけど、「あ、セピアだ!」と気付いたと思ったらいつの間にかカラーに変わってる。
わかりやすいところもあるんだけど、このセピアとカラーも結構意識しないうちにいつの間にか切り替わってる場面も多かったり。。。
「惑星ソラリス」に比べたら、ストーリー性とか話の進行とかは非常にわかりにくい。。。いや、正直よくわからん!
何が起こったのか誰も本当のことは知らないが、様々な憶測による風説がつきまとう立ち入り禁止地域。
ある日突然消えてしまった住民たち。
軍隊を派遣しても生還した人は居ない。
地域は封鎖され、出入り口は厳重な警備で侵入者を有無を言わさず一斉射撃するほど。しかしそこから先は踏み込むのをためらって追っ手はこない。
なにも考えず進むことは死を意味する。
めまぐるしく変わる見えない罠
時折現れる一匹の黒い犬
謎、謎、謎。でもなぜか原発事故ともイメージが重なる。
台詞も独白っぽいのがいくつか入っているし、詩もいくつか入ってるし、論争は哲学的な芸術論でやや難しい。
つまるところは人間という存在について、内面の心象風景について、あるいは希望と欲望の本質と誇りと絶望と居場所と。。。。
教授と作家の組み合わせとその行動も暗喩に感じられる。
この作品がよくSFに分類されてるのはいまいち腑に落ちない。
ミステリアスで不可解な土地が舞台だし、最後に挿入された1カットがあれ?と思わせるが、未来的な描写も特にない。
ぶっちゃけこの作品にストーリーを求めること自体が何かの間違いのような気もする。
ほんとどう表現したらいいのかわからないけど、セリフや物語ではなく映像と音だけで直接脳髄を掴んでぐらぐら揺さぶるような不思議な映画。夢の中を彷徨ってる感じ。
美しい。殺伐とした風景も、光に満ちる水たまりも、ゴミで埋め尽くされた川底も、滝で覆われた乾燥室も。。
いやあ、こんな表現もできるんだ。この映画は娯楽ではなくアートだ。1970年代にこんなすごい映画を作る人がいたんだ。
決して一般受けするような作品ではないだろうけど、いろいろなイマジネーションもかき立てられる不思議なワールドへ迷い込んでしまったようなタルコフスキーの作品に、よりはまった!