あの市川崑さんが総監督をつとめたという、1964年の東京オリンピックの公式記録映画。
(最初にオファーがきたのは黒澤明監督だったとか!どちらにしても日本を背負う名監督だったね)
ドキュメンタリーなんだけど、ドラマのような仕上がりになっている。
ナレーションと音楽と映像の雰囲気が、何となく昔のゴジラとかを彷彿とさせるƪ(‾ε‾“)ʃ
聖火リレーの始まりから、各国からの選手の入国、各国の国旗が並ぶ様など、俯瞰やズームや煽りなど、色んな角度、視点で捉えている。
見守る大勢の観客たちの反応や表情もふんだんに盛り込まれている。
うおっ!昭和天皇のお元気だった頃の姿が懐かしい!
鳩の大群を一斉に離した時の海外選手の困惑した表情や、飛ばなかった鳩を無理に追い立てる姿が笑える。
1人の選手にクローズアップして、スローモーション映像とともに、スタートまでの表情と心境を推し量ったりする場面もある。
短距離、高飛び、砲丸投げ、棒高跳び、ハンマー投げ、陸上1万メートル、やり投げ、走り幅跳び、女子800メートル、リレー、ハードル、跳馬、平均台?、体操、鉄棒、水泳各種目、ウエイトリフティング、レスリング、ボクシング、フェンシング、柔道、射撃、自転車、サッカー、障害馬術、バスケットボール、水球、ホッケー、バレーボール、カヌー、ヨット、競歩、近代五種、馬術(このふたつは静止画のみ)、クロスカントリー、マラソン
競技そのものの中継よりも、始める直前の選手の細かい癖や緊張感、表情や筋肉の躍動感などを強く捉えているようだ。
そのため選手は超ズームが多く、結果がどうなっているのかよく分からないところはある。
他にも1人だけ大幅に遅れて周回遅れで走り続ける選手や怪我して運ばれる選手や、棄権となった模様の選手などの映像も挟み込まれている。
自国の選手の激戦に、祈る思いで応援を捧げる観衆の表情も見もの。
老人の垂れ下がった顎のクローズアップなど不思議な映像も。
競技自体は細切れで、ものによって流す時間も異なるし、1部の選手しか映らなかったり、途中の映像だったり、時間軸もわかりにくい。
しかし、裏方の審判の準備や整備係、各国通信社が同時進行でタイプライターで祖国に速報を送る場面など中継では見えないところが映しだされるのはおもしろい。
選手も競技前の準備運動や競技が終わったあとの挙動など、なかなか通常の中継では映らない部分も。
全般的に日本の記録映画からと言って、日本の選手ばかりをフューチャーしてる訳では無い。
ただし、男子体操はバッチリクローズアップしてますな。
レスリングも日本が強かったんだね。
男子柔道は、金メダルよりも銀メダルの選手の方をフューチャー。
東洋の魔女、バレーボールも白熱の接戦と、決まった直後の監督の様子なども映し出される。
映画館での休憩タイムを挟んだあとは、当時まだ独立したばかりのチャド共和国の選手を追いかけたドキュメンタリーが挿入される。
選手村で当時どのような食べ物が提供されていたかも見られます。
何故か突然ウエイトリフティングの競技についての豆知識が図解!?
マラソンの飲料や水、濡らしたスポンジの受け渡し場所では、今では考えられない光景が続々登場!
なんと、走りながらではなく、完全に立ち止まって何杯もおかわりしたり、休んじゃったりしたら続けて走るのが難しく棄権者も続々登場、、、とそりゃなるわな。
そんな中で、伝説のアベベは淡々と走り続ける。
ぶっちゃけ知らない世代が見ると、どの競技でどの国が活躍してどのような成果を収めたのかはわかりにくい。
当時オリンピックを見たあとで、ダイジェスト的に振り返るには、恐らくハイライト的な場面満載で感動が蘇ってきただろう。
増田明美さんの解説のように、ところどころ「豆知識」がはいったり、当時の生活、文化、建築物や郊外の風景など、時代を伺うには貴重な映像がたくさん入っているが、「記録映画」としてはどうかという議論もあったようである。
ベルリンオリンピックのレニ・リーフェンシュタール監督の『民族の祭典』と比較されたり(これも昔渋谷のレニ・リーフェンシュタール展でちょっと見た)
でも、単なる中継のような映画では見てる人も飽きるかもしれないし、空気感は伝わってくるのだからありじゃないかと。