カンヌのパルムドール受賞で沸き返った作品、見てきました。
良くも悪くも是枝監督らしい、家族のあり方をテーマにした作品でした。
正直ここに描かれる家族たちは社会的には完全ドロップアウト。
平気で万引きや窃盗はするし、子供に手口を教え込んで実行犯にしちゃうし、揺すりまがいに金をせしめるし、死んだ目で風俗店で働いてるし、他人の忘れ物をくすねるし、、、
貧乏大所帯でなかなかまともな仕事にも就けず、生活が厳しいことは確かなのだが、だからといって許されることではなく、それはやはり犯罪である。
「店に並んでる間は誰のものでもない」
「その店が潰れるほど出なけりゃ万引きしても問題ない」
などは、呆れるほど自分勝手な考えだ。
んが、これだけ追い込まれた生活を送っていれば心も荒んできそうなもんだが、彼らは虐待を受けた子供や困ってる人には限りなく優しく、どん底でも明るい。
普通の暮らしに見えるが、子供を虐待して命を軽んじる親や、パチンコの駐車場で車中放置して熱中症で危険な目に合わせる親などもいる中、人間として果たしてどちらの方が劣悪な環境と言えるだろうか。
血が繋がっていれば、家族として成り立つのか?
血が繋がっていなくとも、一緒に暮らしていれば家族らしくなるのか?
そもそも家族の絆とか愛情と言うものはその質や量を図ることが出来るのか?
全体的に淡々とした、どこかノスタルジックな日常生活の流れだが、後半知られざる過去や、心の闇が吹き出してくる。
それは少年の世間と自分との関わりを見つめ直す成長の息吹がもたらした破綻。
特にやはり父ちゃん?がどうしようもないダメ人間なんだけどなぁ。
いろいろな疑問を投げかけつつ、決して答えみたいなものは現れない。
それぞれが何を思い、この先どうなってしまうのかも不透明なまま終わる。
だからハッピーエンドとも言えないし、バッドエンドとも言えないもやもやしたところなのだが、世の中不条理で白黒つけられないことが多いから。
あとは観た人が何をどう感じるかは委ねられる映画といった感じです。
子役のふたりの演技も何とも自然でよかったし、安藤サクラさんが滅茶よかった。
多分子供を持つ母親なら涙無しに見られないだろう。
と、いうのもそれを引き出すカメラワークが前作品と印象が違って、アップの表情取りがかなり複雑な感情を切り取ってたから。
ぶっちゃけ『そして父になる』の方がストレートに私は泣きました。
が、この作品の方が何が正解とも言い難い、解決しがたい裏事情というか、目をそらしている社会問題を抉り出してる気がします。
そして音楽が細野晴臣さんというのもよかったな(^^)