高崎方面へ用事があり、市内のビジネスもつまらないので、付近の温泉を調べてみた。
高崎観音山温泉、磯部温泉、ちょっと離れてるが王道の伊香保温泉などを検討していたのだけれど、いまいちこれだ!と感じられない。
そこで目についたのが、山奥の一軒宿「霧積温泉 金湯館」
ちょっと市街からは離れるんだけど、自然に包まれたひなびた秘湯というのが好きなもので。。。
とくに先日人混みうじゃうじゃの温泉街行って閉口してたとこなので、余計に誰にも邪魔されることもなさそうなとこに飢えてたこともある。
で、予約してからちょっと調べてたら(どのくらい不便とかw)、実はここ、森村誠一の有名な作品「人間の証明」の原点となったところではないですか!「母さん僕のあの帽子どうしたでしょうね。。」というセリフを映画の宣伝で耳にした人もいるのではなかろうか。
てなわけで、温泉に向かう途中に街で本屋に立ち寄り、「人間の証明」を買っていった。なにしろ「携帯電話の電波は入りません」というとこなので、もちろんwifiもないし、風呂入ってごろんと本でも読むスタイルが最適。
森村誠一だけではなく、伊藤博文、勝海舟、与謝野晶子、幸田露伴、西条八十、岡倉天心などなど、錚々たる著名人も訪れていたようです。
横川駅と峠の茶屋を通り過ぎ、中山道を霧積温泉入口方面に入ったあたりから、急に道が険しくなります。
車一台ぎりぎりの道幅の、見通しが悪い曲がりくねった山道。時々待避ポイントはあれど、出くわした場所によってはにっちもさっちもいかなくなりそう。実際何台も途中でお見合いとなり、かなり神経使いました。
やがて右手に滝がみえるともうすぐ。
ここまで8kmぐらいあるのかな?最後に広くなって看板があるところに出ます。
元気のある方はここから徒歩でも行かれるようですが、先に霧積湖のあたりで連絡を入れると、宿の方が車で迎えに来てくれました。
この先は宿の車以外は通行止め。
なぜって。。。いままで以上に厳しい山道で、片側崖だから(ーー;)地元民じゃなきゃあぶない。
宿を見下ろす位置で降ろしてもらい、階段を降ってゆく。
水車が回って、長い掛樋が渡されてるのがひなびた雰囲気を際立たせています
宿泊者は少なかったようで、2間続きの和室に通されました。お布団が敷いてあるのが嬉しい♪田舎の古いおばあちゃんの家に来たって感じでなんか馴染む。
全体的に2Fの部屋から俯瞰するとこんな感じ。
お風呂はいたってシンプルな内湯のみです。でも湯量が豊富でざーざー溢れ続ける掛け流しが贅沢。
泉質はカルシウム硫酸塩温泉で無色透明、匂いもあまりなし。やわらかい感じでぬるめなので長くずっと浸かっていられる。
シャワーはありません。多分温泉をそのまま通した蛇口が並ぶのみ。やや泡立ちは悪い気がします。リンスインシャンプーとボディソープだけなので、気になる方はシャンプー、コンディショナーや、洗顔剤、メイク落としなど持参しましょう。
ちなみに脱衣所に洗面もないですし、ドライヤーもありません。とりあえず浴衣、歯ブラシ、タオル以外は何もないという覚悟で準備して来ると良いと思います。
風呂前の廊下には「卓球場」という部屋があって、今も台は存在してるようですが、物置と洗濯干し置き場として現在は使われているようでした(笑)
ひとっぷろ浴びたら先ほど買った「人間の証明」を開く。なかなか霧積温泉が登場しなくて、やきもきしながら読み進めていたのですが、まさに通ってきた道の情景や、この温泉の風景、関わる周辺の地などがシンクロするので臨場感ばっちりでおもしろかった。こういう楽しみ方もありだと思う。
ちなみに部屋にトイレはついてません。風呂の脇に男女共用のトイレがあり。洋式はありますが、ウォッシュレットはついてません。
部屋に洗面もついてません。と、いうか、、、、
お湯は風呂とトイレの間にある、温泉
水は、風呂の向かい側の棟にある、岩清水(常に大放出中)という自然の恩恵そのもの水道です(笑)
便利な街の生活に慣れきっている身には新鮮に感じるでしょう。清々しいほどに何もないけど生活に必要な最低限のものはあるという潔さがむしろ清々しい。
極端に神経質な人や潔癖性のかたにはおすすめできませんが。。。
こういうところなので、飯を作ってくれるだけでもありがたいと期待はしていなかったのですが、夕食は心づくしの山の幸たっぷりでした。
何の葉っぱだか、あまりてんぷらでもみない木の葉がいろいろ入った天婦羅。
こんがりパリパリに焼きあがったイワナ
群馬名産、新鮮そうなぷりっぷりの刺身蒟蒻
栗入りのキノコご飯
具材のてんこもりすぎる汁
シンプルだけど、どれも心がこもった丁寧な作りでおいしくお腹いっぱいになりました。へたに豪華な旅館飯よりこういうほうが好きだわ〜〜〜〜。
翌日、朝風呂の後に裏庭散歩。大きな水車がトレードマーク
朝ごはん。キノコ汁がおいしかったなあ。
帰りも駐車場まで危険な道を車で送ってくれます。
「人間の証明」を霧積近辺までは読み終わっていたので、話の中に登場した「新館」ってどこにあったんですか?と、宿のかたに聞いてみたら、まさにこの駐車場脇に建っていたそうです。
今は看板と水車だけが名残。はは〜〜ん、こりゃ近いわな。昔はホイホイ坂登って本館いかなきゃならなかったろうから、山登るの嫌って人は新館だったのね。
帰り際にダムに立ち寄って「おたね婆さんが突き落とされたのは、どのへんだったんじゃろ。。」と思いを寄せてみる。結構な高さありますがな。
群馬にもまだこんなひっそりと自然と共にある温泉宿があったことに感謝。好き嫌いは多分わかれるだろうが、私は好きです。
家族経営ということで、男衆は一見ぶっきらぼうな感じだけど、話すととても暖かい方達です。聞けばいろいろなことを教えてくれます。
自分が運転しないですむのなら、また来たいと思える宿でした(笑)