近未来、生まれる前から性別どころか個人の能力、病気の因子、肉体的な特徴から頭脳レベルまで遺伝子レベルで解明され、遺伝子操作を施すことによりマイナス面な遺伝子情報は排除されたエリートを「つくりあげる」ことができる時代が到来する。
そうした操作のために体外受精で管理されるのが当たり前になり、ラボで処方されていくさまはもはや生殖活動というより「培養」だ。
とはいえ、重大な病気の心配をしなくて済むようになるのなら。。。
もっと運動神経がよかったらなあ。。
親のこの部分を受け継げばもっと見栄えも良く、あるいは勉強ももっとできたはずなのに。。。
そんな思いは誰しも抱いたことがあるだろう。だいたい似てほしくない所が似るもんだ(--;)
空想がぶっとび過ぎず、もしかしたらこのまま医学や科学がすすめばこうなる日がくるんじゃないか?と思わせるぐらいの設定がちょうど良いリアル感を生み出している。
サイボーグではないので生身の感情もあるし、親の遺伝子が元になっているわけだから最良の選択をしたとしても個人差は残る。
ランダム性がなくなるのは人間の有り方としてどうかという疑問は残るが、幸福に生きるための確立をあげる選択肢という面は否定もしきれない。
ただ、こうして遺伝子操作でマイナス面を排除された人間が「適正者」であり、自然にまかせた結果、さまざまな劣性の性質を抱えて生きる者を「不適正者」と差別して、その後の人生選択を奪ってしまうような社会はやはり幸福ともいいがたい。
とある夫婦がそんな体制に抗うかのように自然にまかせて長男を産み、そのために「不適正者」として差別されたり病気がちで苦労した結果、2人目は遺伝子操作にまかせたことから始まる話。
当然肉体的にも頭脳的にもその差は歴然として、その後の生き方に影を落としていくわけです。
それなりに万能で皆に愛される弟と、できそこないのような扱いの兄。
自分の能力に限界を感じながらも、そりゃもう必死で体を鍛え、勉強し、少しでも夢に近づくよう努力し続ける姿。周囲に鼻で笑われても、運命に抗ってでも可能性に挑戦し続けるそのひたむきな姿勢こそ人間らしいと思えるのだけど。
そんなときに出会った「適正者」の中でもエリート中のエリート。
生まれた時からおおよその寿命はわかっていると言っても、不慮の事故や未知の苦悩までは計算でわりきれない。
完全無欠なヒーローとして生まれてきた彼が、その役目を果たせなくなった苦悩も見所。
基本的に明るくさばさばして割り切ってるように見えるが、周囲の期待と選ばれた能力と挫折のはざまで自分が生きるための目標や夢を失ってどれだけ煩悶したことだろう。
いくら完璧な遺伝子でも贅沢だけじゃないエリートとしての重荷もあるんだなあと感じられる。
こういうやや人間離れした役はジュード・ロウ本当にはまるw
犯罪とわかっていても生きた証をつかみたい者。
他人の夢を共有して自分の希望にした者。
深いコンプレックスから疑い深くなる者。
生きている人間の成り代わりに突如起こった殺人事件。ミステリーや友情や愛憎などいろいろ詰まった盛り沢山な内容で、ぐっと引き込まれる。
最後もはらはらどきどきで、「適正者」と「不適正者」の行きつく先がそうなるかと。
人間だからこそ持つ夢や希望と、わかりやすい効率のふるいとの狭間で何を正しいと信じられるか。
結構深いテーマをもった良い作品でした。
予想外におもしろい映画を見つけたよ。これはおすすめです!