アンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』と原作を同じくする、30年ぶりの現代版。
そりゃこういうSF的なものは、現代の方がよりリアルにより迫力のある映像に仕立てあげられるだろうが、その分俗っぽくエイリアンかトワイライトゾーンみたいになってしまうのではないかという危惧があった。
監督はスティーブン・ソダーバーグだが、ジェームズ・キャメロンが制作参加してるし、ジョージ・クルーニー主役だから余計に。。。
ソダーバーグ監督も、チェ・ゲバラの革命を描いたフィクションチックなのもあれば、オーシャンズシリーズのようにTHE ハリウッド的なのもあるから温度差大きいしw
惑星ソラリスを探査中の宇宙ステーションからある日要領を得ないSOSのメッセージが発信され、消息を絶つ。
救助に向かったはずのものたちも全て消息を絶ち、戻ったものも皆無。
とにかく言葉では説明できないが、来ればわかるということだけ強調。
とにかく要領を得ない会話、何を暗示しているのか良く分からない映像、謎、謎、謎のオンパレードで、一体何が起こっているのか判らないままどんどん進行していく。
やがて、そこにいるはずもない人間が出現したり不可解な現象に遭遇する。
錯綜する記憶のそこからぼんやりと浮かび上がってくるものはなにか。
実在とはなんぞや。
自分の記憶でありながら自分の経験ではないとハッキリ感じる感覚とは?
人間の記憶のあやふやさ。
もしかしたら自分の都合で捻じ曲げられているかもしれない。
すべての答えはソラリスにある。
っていうか、惑星そのものが記憶や希望や悔悟やもろもろの感情のようなものを飲み込み、吐き出し、願望を現実に引きずり出して時間も生死も超えた異次元世界を作り出してるというか。。。
驚いたことにあのミステリアスな雰囲気を壊さない仕上がりにはなってると思う。
ぶっちゃけて言えば、わかりやすく一般受けする形に敢て持っていかなかったことに敬意を表する。
間違いなく「2001年宇宙の旅」のごとくなんだかよく理解できなくてつまらんという評価も得ただろうに。
スノー役のちょっとイかれたジェレミー・デイヴィスの演技もよかった。
タルコフスキー作品よりもストーリー的には少し追いやすくなってはいるが、音楽なども現代的にがんがんメロディーラインに乗せず控えめに、どちらかというとクラシカルなSFムードになってたのも好感が持てた。
ソダーバーグが監督だけではなく脚本も手がけたというのだから、強い思い入れがあったのだろう。
個人的にはタルコフスキー監督の映像の世界が大好きだが、これはこれで引けを取る作品ではないと思う。