笑う月

随筆・エッセイ

笑う月 (新潮文庫)

これまた古い本ですが。自分の体験談など、生活臭のあるような文章をほとんど書かない安部公房さんの、いわば夢日記。
夢そのものだけではなく、妄想的なものや、思い違いからの想像や、古い記憶の不思議な思い出など、それに準ずるような小片もまとめられている。

私も夢を結構覚えているほうなので、目覚めた時に反芻して楽しむことがままある。
楽しい夢であれ、悪夢であれ。
反芻してるうちにまたまどろんで続きの夢を見てしまったり(笑)

夢というものは、時として前後の因果関係や状況、論理を飛び越えた思わぬ飛躍をする。
起きた時に思い出すと、なんでそこでそうなるのか、どうしてそこがつながるのか理解に苦しむようなことも多々ある。

古くからそうした夢の内容について、深層心理だとか、ストレスだとか、警告だとか、予知夢だとか様々な解析がなされてきたが、この本ではそういうことには触れてません。

見た夢についての考察はあるのですが、「それが自分にとって何を意味するか」ではなく、夢で起こった現象そのものについてそのまま夢の論理をこねくりまわしてるというか。。「たとえば、タブの研究」など)

一般的な「小説」とはまた違うので、「あの安部公房の小説のひとつ」と思って手に取るとつまらなく感じる人もいるかもしれない。
どちらかというと、ネタ帳的なメモに近いものだと思う。

そのものを小説にしているわけではないが、それがヒント、想像の根源となっているものもある。
原型さえとどめていないが、「ああ、あの作品はこんなところから生まれたのか」というのもあります。

現実社会ではあり得ない不可解な状況や行動。創作活動をする上では、こうした常識にとらわれない発想というのも必要かなと感じます。それが執筆であれ、絵画であれ、音楽であれ、造形であれ。。。。

発想の種はまさにどこに落ちているかわからない。いろいろな見聞や経験も、深層にしまいこまれて自分でさえ自覚してないのに突如どこかで発芽したりする。

最後の尾辻克彦さんの「解説」で、夢の話で盛り上がるが、実は他人の見た夢の話になどみんな興味はなくて、自分が見た夢のほうがすごいと話したくてしょうがないというようなことが書いてあり、ああ、なんかわかるなとおもしろかった。(笑)

以前もつけていたことがあるが、誰かに読んでもらうことを前提じゃなく、自分の「発想の種」として、また夢日記をつけてみようかなと思いました。

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