これまでにも黒岩氏は、数多くの古代権力者たちの争いや憎しみ、悲哀や愛憎等を生き生きと描いて来た。
しかしそれはあくまで「上」の話であり、庶民や奴婢の生活を踏み台にして成り立っていた。
人間としての尊厳も認められていない過酷な世界。。。
今回は珍しくそちら側にスポットをあてて、民の立場から見たこの時代の様相を描き出している。
役小角と言えば葛城山系にゆかりのある伝説的な人物で、修験道の開祖とも呼ばれる。
以前古道の「葛城の道」を散策したのだが、その付近にも片鱗は見られた。
実在していたようだが、鬼神を使役して、自由自在に空を飛んだりするというような、人間離れした超人・仙人というようなイメージも定着している。
この作品では、あくまでも普通に懊悩や苦しみも感じる「人間」としての役小角像を描き出そうとしている。
まあ、それでも普通の人間には無理、ありえない!という場面もありますが、それだけ並外れた強靭な精神力を持っており、そのために伝説も生まれたのだろうと。。。
やはり何でも極める人というのは、努力に努力を重ねて、自分が持ちうる以上のパワーをひきだそうと日々精進をおこたらないから、人と差がついてくるのでしょうね。
エンターテイメント性もあって、肩肘張らずに読める一冊です。