大胯びらき(澁澤龍彦訳)

海外小説

大胯びらき (河出文庫)

澁澤氏訳でこの題名だと、なんかエロス系と勘違いされそうだが、実はバレエ用語から来た名前で内容は思春期の微妙な様相を描いている作品であった。

表題の作品は、空々しく、美しく、未完成で屈折した様を詩的に誇張した比喩的な表現になっている。
その為、最初はなんか哲学の本でも読んでるようにややこしく感じるかもしれない。
この不安定な文章自体が、思春期の危うさをも表現しているのではないか?とも思ったりしました。

ずっとこんな調子で、断片的な一幕のような描写が続いていくのかなぁ?と思い始めた頃に、ある街での集団生活を柱とした、個性的な人々との本編がはじまる。

さまざまな形の愛と裏切り、錯覚や欺瞞を通して世間を見た少年が、目に見えない部分で何かが変わって行く。。
それを成長というのかもれないが、どこか物悲しい滑稽さを伴う。
また、物語の合間には「死」というものが暗示のごとくつきまとってくる。

小説になっているのはこの部分だけで、以下

「美男薄情」「哀れな水夫」「オイディプース王」「未亡人学校」と劇作の戯曲となっている。
個人的にはこちらの方が、わかりやすくおもしろく感じられた。

自分が演劇をやっていたせいもあるかもしれないが、登場人物の役にすっぽりと感情移入して、自分ならどう演じるか?などと妄想してしまったり(笑)

それぞれの登場人物の心のつぶやき。
ほとんどが幸せな結末ではない、すれちがいと運命のいたずら。
ちょっと癖はあるけど、繰り返し読むほど言葉のおもしろみが感じられる作品だと思う。

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