澁澤龍彦初期小説集

国内小説

澁澤龍彦初期小説集 (河出文庫)

澁澤さんの著作には数少ない創作小説集。

彼の描く幻想ワールドにはもともと「オチ」のようなものがないので、なんとなく宙ぶらりんな感じに陥るものだが、初期の方のものばかり集めた本小説集は、よりその傾向が強いように感じられる。

まあ、一般的な起承転結とかそんなものを求めてはいけない著者なのではあるが(笑
まったく著作を知らない人に、どんな内容?と聞かれて一口に説明できるようなもんじゃないのが困り者だが魅力でもあるのだろう。

非常に抽象的、観念的な世界が広がりながらも、視覚的に非常に鮮明ではっきりしている。
だから幻想小説でありながらもほやほや〜〜とした感じではなく、冷たくてするどい、硬質なダイヤのよう。

『高丘親王航海記』ほど完成された文章ではないけれど、そこには美しさの中にもエロスと哲学と残虐さとが潜んでいて、「ああ、澁澤ワールドだな」と感じる。

文体も硬い感じはするけれど、難解なわけではなく、普通にするりと読める。以下の9編が収録されている。

* エピクロスの肋骨
o 「撲滅の賦」
o 「エピクロスの肋骨」
o 「錬金術的コント」
* 犬狼都市(キュノポリス)
o 「犬狼都市」
o 「陽物神譚」
o 「マドンナの真珠」
* 人形塚 他
o 「サド公爵の幻想」
o 「哲学小説。エロティック革命 二十一世紀の架空日記」
o 「人形塚」

このうちの何編かは、違う形で澁澤作品に触れた初期に読んだ覚えがあるものだが、あまりにも前でどの本だったか覚えてないな〜。

「犬狼都市」は代表作のひとつであるから言うまでもないが、「撲滅の賦」も面白かったし、「人形塚」などはちょっと毛色の変わった臭いがして結構好きだ。

「マドンナの宝石」は、どうも「パイレーツ・オブ・カリビアン」を彷彿させる(著作の方が古いわけですが)

ひとつひとつは短編なので、ちょっとした時間にさっくり読めるのも良い

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