乱 4Kデジタル修復版

HistoricalHuman Drama
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BS4Kで修復した黒澤明/溝口健二/小津安二郎作品を放送していたので、気になるものを録画してみた。
合わせて「三大巨匠 奇跡の名画~4Kでよみがえる黒澤・溝口・小津~」という特番もあって、その修復の現場の様子や国内外の映画監督のコメントなども見られて面白かった。

さて、修復作業が済んだ4K映像とはどのようなものか。。。。
んん~~?冒頭から違和感を感じるほどの鮮やかさ。
こう自然な目で見るのに近い鮮やかさではなく塗りたくったような毒々しいほどの不自然さを感じる、、これ彩度いじりすぎじゃね?と正直思ったが、上記のメイキング特番を見るとそれぞれの監督が思い描いた映像に近くなるように修正してるらしい。

群雄割拠の戦国時代、とある山国で一代でのし上がってきた一文字秀虎も齢70を超えた。
彼には三人の息子がおり、それぞれ一郎(寺尾聰)、次郎(根津甚八)、三郎(隆之介)であった。

巻狩りの最中のうたた寝で孤独な夢を見た後、秀虎は隠居の決意を述べて太郎に家督を譲り、次郎、三郎にもそれぞれ城を与えて太郎を支えるように諭す。

「1本の矢はすぐ折れるが、3本束ねると折れぬ」

毛利元就の話として知られる「三本の矢」の逸話ですね(本当はちと違うらしいが。。。)

しかし、何かと反抗的な態度を取りがちであった三郎はその矢を力ずくでへし折り、血で血を洗う生き方をしてきた父の情に甘えたような弱気な言葉を詰る。

父におもねる太郎二郎と逆に苦言を挺した三郎と、それを庇った家臣のは共に追放される。

実はこの巻狩りは三郎の嫁候補の二勢力を呼んでいたのであるが、片方はこの顛末で手を引いたが、藤巻氏は逆にいたく感心して婿に迎えることに決めて追ってきたのであった。

和製『リア王』とも言われているこの作品。
化粧もあるが、仲代さんの眼力が半端ない。
秀虎が可愛がっている道化役のピーターの役どころもキーになっている。

家族の情を信じ、立場は確保したままのんびりと余生を過ごせると思っていた秀虎であったが、次々と裏切られ追い込まれていく。
最初は悪妻だと思っていた楓の方も、過去の経緯を聞いてみれば無理もない因果応報。
兄弟同士も決して1枚板などではなく、やがて骨肉相食む地獄図絵が展開していく、、、

転がり落ちていく秀虎の苦悶を表す表情、美しい計算された情景、獅子身中の虫。取り込まれる罠。片時も離れず付き従ってきた郎党らの悲惨な末路。

CGなどない時代の実物のセットと大人数のエキストラの迫力。
セリフのない長い無言の戦闘シーンが、言葉以上に凄まじく物語る。
人間同士の殺し合いは毒々しく、醜く、ドロドロとした暗い底なし沼のようだ。

その修羅のただ中に佇む仲代さんの表情がこれまた凄まじい名演技。
全ての手のものが殺されて、あるいは自害し、炎に包まれた櫓の中にある姿はまるで本能寺。

自然や炎などの美しさと、幽玄な美も見事に重ね合わされ、所作の一つ一つにも繊細な注意が払われているのがよく分かる。

原田美枝子さん演じる楓の方の烈婦ぶりも見ものである。
ピーターさんは決して演技が巧みという感じはしないのだが、その素朴さが主人を憎みながらも離れられぬ強い愛憎の絆のようなものが感じられる。

今見ても圧倒される迫力と熱気が満ち溢れ、フィクションながら格が違う時代絵巻と人間の愚かさや惨めさや怒りや絶望、裏切りと憎しみが展開される。
こりゃあ時代を超えてすごい映画だ!

子供の頃はなんか迫力のあるすごい戦国映画なんだなぐらいしかわからなかったが、今見るとその根底にある人間というものの愚かしさや虚しさや苦しみなどがぐぐっと伝わってきて気圧される。
終盤などはこれぞまさしく「あゝ無情」。神も仏もないのかという絶望の淵に追い込まれます。
めっちゃ重く暗い映画なんだけど、敢えて暗部に踏み込んだ内容に非常に惹かれてしまう。

すごい!を超えて凄まじい!という印象が焼き付く日本の誇れる映画だと思う。うん、これは見るべき。

地味ながら何気ない立ち振る舞いの姿も美しい鶴丸役は、本名だったのでわからなかったけど野村 萬斎さんだったんですね。。

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