怒り

Human Drama

以前映画館での予告編を見て、大好きな渡辺謙さんが生かされた役柄になってそうなのに加えて音楽が坂本龍一さん、そして雰囲気的にもなかなかおもしろそうだと久しぶりに邦画系で食指が動いた。

実際期待を上回るおもしろさで、上映終了間近だが観てよかった。

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史上最高のポーカー映画

監督は李相日。
名前であれ?と思うかもしれないが、在日朝鮮人三世で新潟出身。
この作品だけに限らず日本を舞台として日本の俳優の作品を作っているのでもはや日本の監督と言ってよいだろう。(日本版リメイクした「許されざる者」「フラガール」など)

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この『怒り』は吉田修一の小説が原作。

怒り(上) (中公文庫)

予告でもさまざまな怒りの表現をピックアップしてたように思うが、怒りの感情だけではない内面を描き出す見事な演出になっている。

とある夫婦の惨殺現場から始まり「怒」という謎の血文字が残されていた。整形しながらまだ逃げおおせている指名手配犯をめぐる疑惑が通して底辺に流れるが、主題は犯人探しのミステリーなどではない気がする。

あらすじ。。。というのもちょっと説明しずらいんだよねえ。

居場所をなくした人、居場所を求める人、居場所などに縛られない人。
求める人と求められる人。
信じる人と、信じられない人と、信じたい人。
何が嘘で何が本当か。

千葉の漁港、きらびやかな東京、自然に包まれた沖縄という全く違う場所で、それぞれの葛藤と人間ドラマがつむぎだされる。
愛情とか嫉妬とか、善意とか悪意とか、まるごと相手を受け入れて信じることのむずかしさ。

そして、最後にすべてがつながるわけでもなく、各所の人物たちが交わることもない。
けれども同じ殺人事件が、それぞれの場所の人たちに影を落とし波立たせる。

怒りという感情についても、特定の他人に向けられるものではなく、不条理でどうにもできない社会に対して、また不甲斐ない、信じきれない自分自身に対して鋭く突き刺すように表現される。

痛み、悲しみ、後悔、苦しみ、みじめさなどが混雑したかなり複雑な感情。

謙さん以外にも配役が非常に良かった!
若手イケメンを集めたのではなく、個性の強い演技派を取りそろえたとこはポイント高い。

松山さん綾野さんの陰のある暗い目も雰囲気あるし、森山さんの内面が見えない飄々とした存在感もあるし、何と言っても妻夫木さんがすごい良い役者になった!!
あれだけ微妙な表情で表現力を広げられるようになっていたとは正直驚きました。まだまだ化けられそうですな。

人間の内面に向き合わされる良い映画でした。

ところで、全体のサントラを坂本龍一さんが手がけてるんだけど、主題曲が”怒り”ではなく”許し”なんだよね。(「怒り」のテーマも劇中では使われてますが)。作品を見た後はなんとなく納得する。
全体的に静かで明るさはないんだけど、改めて聞くとこのサントラ結構好きかもしれない。。

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「怒り」オリジナル・サウンドトラック

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