新訳 ゲバラ日記

ノンフィクション

新訳 ゲバラ日記 (中公文庫)

チェ・ゲバラという人物を知るために、次に選んだのがこれ。
彼の生涯の後半を捧げたボリビア闘争の最中に走り書きした日記です。

映画でいうと、『★CHEチェ 39歳 別れの手紙』に相当します。

ボリビア闘争は、キューバ革命の成功と言う下地があればこそ、ここにつながったと言え、「チェ・ゲバラって誰?」と言う方はそちらの方の知識から得ていった方が理解できると思います。 おすすめは、私も読んだ「チェ・ゲバラ伝:三好 徹」

増補版 チェ・ゲバラ伝 (文春文庫)

彼の他の著書とは違って、元々著作として発表しようという意図で書かれたものではなく、ゲリラ闘争の進捗状況や反省点をメモ的に書き綴られたものなので、読みやすいという部類ではないと思います。
その日の出来事と、報告事項、探査結果、現在の位置、天気、舞台の問題点などを淡々と書き綴っているので、ともすればたいくつに感じがちかもしれません。

しかし、そこには飾らない彼の生の声があり、非常に貴重な資料と言えるだろう。

ちなみに、最初序文から丁寧に読んでいってもいまいちピンとこなかったのだが、最後まで日記を読み終わった後にもういちど戻って読み返すと、非常にそれらの言葉が生きてくる。
最初序文を飛ばして最後に読んでもいいかもしれない。

巻末にはボリビア人民に向かっての「コミュニケ」などの付属文書に、関わりのあった人物(呼び名がころころかわってわかりにくい)や組織の小辞典やモノクロの写真集もついている。

できるだけ客観的に記そうとしたのであろう淡々とした中にも、彼の感情や、部下に対する思いや信頼度などがちらほらと見え隠れする。 何よりも、実際どのように移動して作戦を遂行していったのかがよくわかる。

正直なところ、この日記を読んでいて思うのは 「なぜ、このような状況下で最後までゲリラ闘争を続けたのだろう?」 ということ。

キューバ革命の中に成功の秘訣が多く盛り込まれていたとすれば、このボリビア闘争においてはそれらのことごとくが背を向けているように見える。かなり痛い。

それでも彼の日記はだいたい 「些細な問題はあるが、おおむね順調にすすんでいる」 と、締めくくられる。 客観的にみれば些細どころではない!

しかしこれは、彼の自意識過剰というよりも、絶対に成功させてみせるという強い信念の表れではないだろうか?

いつか、権力に踏みにじられている人民も目覚める時がくる。
いつか、だらけたとこのある部下も強い自覚を持つ日がくる。
いつか。。。

しかし、その日が来るまで彼の生命はもたなかった。 ボリビア闘争は外部からみれば不成功にうつるかもしれない。けれど彼のその信念は人々の記憶に残り、こうして延々と世界に伝わっている。 彼亡き後も最後まで抵抗を続けた配下の人々もいる。彼の言葉はまだ生きている。

この本は唐突に終わる。
そう、それは最後のページであると気づかせないほどに唐突に。
最後の日付は1967年10月7日。ゲリラ隊結成後11ヶ月目の記念日である。 その最後の日記からはまったく悲壮感も絶望も感じられない。むしろ悠々として非常に冷静だ。

彼が捕縛されたのが翌日のことである。

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