女龍王神功皇后〈上〉

歴史(日本)

女龍王神功皇后〈上〉 (新潮文庫)

精緻な時代考証を元に、自由な想像の翼をはばたかせて古代の人々を生き生きと描く黒岩さんが、ほとんど資料も残っていない伝説の時代へ。

なにしろ飛鳥・奈良時代以前、卑弥呼の時代の後のことであるから、神功皇后の存在自体が疑問視される意見もある。
この名前と共に出てくるのは、だいたい新羅出兵の伝説であったりするのだが、そもそも『古事記』も『日本書紀』も後世に作られたものだからね。

まあその付近の話なのかと思ったら。。。生まれる以前から始まった!(笑)
おかげで当時の地形や、勢力図や日本が「国」としてまとまる以前にどのような状態であったかが憶測できる。(統一の観念ができるのはもっとずっと先のことだけど)
蘇我氏の時代ぐらいまでもそうでしょうが、確実な権力者というのではなく、それぞれの土地にそれぞれ有力者が居て力の均衡を見ながら協力したり侵略したり。九州も要処としてどんな役割を担っていたか。。。

日本は単一民族国家のようだけど、結構地域で顔が違っていたりもしますね。
昔は大陸との間でもっと自由に往来して住み着いていたから、結構血も混じっているはず。おとなりの国々と顔立ちが似てるのも当たり前といえば当たり前。

この著作では、伝説を伝説らしく(?)リアリティな史実というより空想を広げたエンターテイメント的な色が強くでている。
例えば、山岸 凉子さんの聖徳太子をモチーフに描いた「日出処の天子」(これも名作w)などが近い雰囲気を漂わせている。

実際にどうであったか、何があったかはわからないけれど、それぞれの心情を血の通った人間らしく書きだすことで、すんなりと古代の世界へ踏み込んで行かれるので読みやすい。
自然そのものに脅威を感じていた、アニミズム的な宗教の原点もなんとなく見えてくる。

上巻だけで522ページとかなりボリュームのある内容だが、まだ「皇后」になる以前で下巻へ続く。

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