魔界水滸伝(魔界誕生編)

高校生のころ、はまって寝る間も惜しんで夢中になった栗本薫さんの小説。
当時は クトゥルー神話をモチーフにしてることは知っていたが、そもそもクトゥルー神話自体がどういうものだかわかっていなかったし、題名の水滸伝についても深く考えていなかったはずだ。

当時は映画の「魔界転生」やら「あなたの知らない世界」やら雑誌「ハロウィン」やら結構なオカルトブームであったと思う(笑)

さて、大人になった現在、 ラヴクラフトの クトゥルー神話そのものも何冊か読んだし、中国の水滸伝も様々な著者のバージョンを読んだし、古事記なども数パターン読み込み、各国の宗教的な背景も勉強したし多くのSF映画も見てきたし、登場する各地へも実際に旅行してきた。

つまりこの物語の背景となる下地がだいぶ理解できるようになっていたところで、久しぶりに読み返したら感じ方が違うかもしれないと思い一気に揃えてみたのだ。

。。。。。。。。。。深い。
あまりにも壮大な話に改めてびっくりしたよ!
やっぱめちゃくちゃおもしろい!!!!!

小競り合いや紛争はあれども、そこそこ平和になにげない毎日が続くと思っていた世界。
しかし、一般人が気づかぬところで世界は変容しつつあった。。。

とりたてて特技も容貌も勉強も遊びも秀でたところもなく、よくできた弟にコンプレックスを抱く地味で平凡な若者が、悪夢から非日常の世界に巻き込まれていくところから始まる。
こうなると、その平凡だった若者があらがえない環境の中でたくましく自我を育てて成長してかっこいいヒーローになりそうな流れだが、そうはならずあくまで軟弱で非力で流されて足を引っ張る役立たずでなんとももやもやする(^^;)

その代わりに数奇な運命で、社会不適合者と言ってよいような、奇人変人怪人たちが周囲に集まってきてしまうのだな。

この物語は単なる異世界からの侵略ではない。
クトゥルー神話の異形の神々にあらがうのは、日本の妖怪や古き神々などのこれまた普通の人の目には見えぬ異形とされる存在。
それぞれの属性や本拠地によって独特の派閥のようなものもあり、葛城、生駒、富士など古来からの霊場も登場する。
神道、陰陽の思想、仏教の思想、哲学なども織り込まれ、地球環境問題なども包括し、理論体系づけがしっかりしているのだ。

さらに、別に「地球を救う=人間を救おう」と思っているわけではない先住者にまかせて踏みにじられるままではいられないという気概のしぶとい人間。
さすがにそれなりの技術力や武芸、超能力など非凡な人々の集まりだけど。

まあ地球を救うのに日本人だけでは宇宙戦艦ヤマトになってしまうのだが(笑)
日本人としての日本を奪われたくないという思いを強く持ちつつ、各国の動きや他国の宗教事情やカラード差別問題などもとりこみ、とにかくスケールのでかさが半端ない。

なのだが、おおざっぱではなく、個々の人間関係も細やかに描いていて、大事な人との別れや無力さ、爽快な強さと未知のものに対する恐れ。自分の存在に対する疑問と追及、友情と愛などの共感できる人間らしさも織り込まれている。
半面、理性を失ってしまった人間がどうなっていくのか、身勝手な正義やエゴが渦巻く愚かさや残虐性、無関心など人間のもつ闇なども描き出す。

日本古来の妖怪や神々が人間的なとこもあるのはギリシア神話などとも同じようだが、それぞれのもつ特性がやはり人間とは相いれないところもある。
さらに異次元の生命体である クトゥルーの神々などは、まったく異質なものであり、見た目だけではなく理解できる精神構造でさえないという割り切りも良い。我々の住む目に見えて触れられる3次元だけがすべてとは限らない。

一応全 20巻ではあるが、内容的な区切りとして 1~11巻までが「魔界誕生編」、12~20巻までが「 地球聖戦編 」とされている。

ちなみに水滸伝らしさはこの前編11巻最後になって判明するよっ。

いやはや、これ高校生の時どれだけ自分が理解できてたんだろ?(^^;)
てか、あんま青少年向けの読みものじゃなかった気も。。。。まあ小学校から江戸川乱歩にはまってた子ですから。

余談だが、ちょうどKindleで「 変幻退魔夜行 カルラ舞う!」シリーズの一部が無料化してたので懐かしく読んでみたら、どことなくかぶるw。
ハロウィン掲載時期が同じころになるのだが、まさに日本の古霊場や妖魅、祭祀などを取り扱っているので合わせて読むとなかなか興味深い。

と、いうことで、ただいま後編も読み進めています。

魔界水滸伝〈1〉 (角川文庫)

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