怪:地相か家相か

小噺

夏の夜のお供に、、と思ってる間に9月にはいってしまいましたが(汗)残暑残る秋の夜長に私自身が体験したなんとも奇妙な出来事をお話ししましょう。

ある一定の時期、、、というか、あとから思えば1番長く住むことになった実家ともいうべき特定の家に住んでた間に、何年もの間奇妙な体験に悩まされ続けた時期があった。

今は両親もそこを引き払って別の土地に移住したのだけど、そういう話を当時した所、一笑に付されたので、家族の中で私だけだった模様。

元々別に霊感が鋭かったわけでもなく、学校での肝試しや都市伝説なども何も起こらない平凡な子だった。
ただし、周囲には亡くなった猫が毎晩布団の上に座り込んでいたり、防災頭巾を被ったモンペ姿の親子が焼け出されてきた姿で現れたとか、友達についてる守護霊が見えてしまうとかそういう体験を持つ子が少なからずいたものだ。

幼少の頃、横浜からその町に引っ越してきて、その後近所の空き地だった所に建売住宅の一角が出来て念願のマイホームをもてたのが小学2年の頃。
(因みにこの建売区域を売りきってすぐにその不動産屋は夜逃げしたらしい。原因は謎)

近所は国道がすぐそばで、同じような形の建売住宅が4軒ずつ2セット並んでいて、向かい合わせの間に細い行き止まりの私道がある形だった。

当時は母と兄と枕を並べて1Fの和室で川の字に布団を敷いて並んで寝てました。

ある晩、ふと夜中に目が覚めた。
その部屋は私道側に面していたので、どうも家の前のあたりを男女数人の大学生くらいの男女がワイワイ喋りながら歩いてる声がうるさくて目が覚めてしまったようだ。

子供ながら、こんな夜中に人迷惑な奴らだと思ったのですが、喋りながら歩いているらしく、寝てる姿勢から見ると右後方(私道入り口)から足元(私道を進む)に向かい、その後足の裏側に進んできた。
つまり、「あぁ、なんだ隣の家の客なんだな」「さっさと家の中に入ってくれれば良いのに」なんて思ってました。

ちょうどそちらが隣の玄関だったので、当然それで静かになるはずだと思ってたのだが、その話し声は隣の玄関に吸い込まれていく代わりに、足元から体の左方向に回り込みました。

左?

その時です。体中の血の気がサァーッと一斉に引いていくような感覚と共に悪寒が走ったのは。

左側というのは言うまでもなく「我が家」の家の中。
隣との境にはフェンスがたっており、そちらにドアもなく窓も閉まっていて、あるのはトイレや風呂の水場。
それにお隣は子供も我が家とほぼ同じ年頃でそういや大学生などいない。
それらのことを判断できたのは多分コンマ秒くらいの一瞬だったと思うのだが、その気づいた瞬間に激しい金縛りとなり身動きが一切出来なくなった。

それが初めての金縛りというものでした。
頭の中は妙にピーンと張り詰めたようにギンギンに冴えていて、でも体は足の親指ひとつ動かない。
しかも全身が痺れたようなビリビリ状態でとにかく苦しい。

正確にいうと実は開こうと思えば目だけは開ける状態だったので、1度そっと開いてみたら目の前に巨大な蜘蛛の巣のようなものが迫っているのが見えたので、慌ててまた目を閉じて見ないようにした。

とにかくこれはなんだかやばい状態だぞ?という意識だけはあり、親がクリスチャンで週末教会にも連れていかれていたので、覚えていた基本の祈りを一心不乱に繰り返してみた。

が、一向に効き目はなく、ワイワイガヤガヤ喋る声はもはや家の中のあちらこちらをうろつき回っている気配がしている。

やはり日本の霊にはキリスト教とかピント来ないんじゃないか?と次に九字(臨兵闘者皆陣列在前)を唱えて心の中でカゴメを切ってみたりみたり、うろ覚えの般若心経を唱えようとしたが途中までしか覚えてなかったので、最終的には「南無阿弥陀仏」をひたすら念じていた。

冷や汗を書きながらどのくらい静かな格闘を続けたのか、かなり長い時間が経った気がしてたがようやく声がやんで金縛りもとけました。
そこで布団に起き上がって隣に寝ていた母の顔を覗き込むと、まるで能面のような無表情で叩いても起きなそうな様子にちょっと腹が立った。
でもほんとスヤスヤと安らかな眠りというより硬直した能面みたいで不気味ではありましたね。

暫くはおかげでなかなか動悸が治まらず眠れなかったのだけど、翌朝その部屋の窓や雨戸を何となく調べて見たりしたけど、当然おかしな所は何も無かった。

そしてこれはその後長く続く奇妙な体験の発端だったのである。