本願寺中興の祖で、「本願寺蓮如」と呼ばれることも多い蓮如上人の生涯を綴った物語です。
「慧燈大師」の諡号もあり、寺巡りなどが好きな方なども、目にしたことはあるんじゃないかな?
元々子供むけに書かれたものらしく、単行本なのに文字も大きく改行も広いので高齢者にも読みやすいでしょう。
内容的にもかなり噛み砕いた調子で書かれているので、物語としてすっとはいっていかれて、おおまかな人となりを感じることができる。
本願寺と言えば、あと浮かぶのが戦国時代に絶大な権力を持って織田信長と対立していた顕如。
なので非常に大きくて周囲に対する影響力も大きい、堅固な城のようなイメージがあるのですが、そうなったのも蓮如上人がいたからこそ。
蓮如上人が誕生した室町時代の本願寺は、京のかたすみにひっそりとしていた小寺で、風前の灯のような状態でした。
この本では、そのような困窮した生活のために幼い頃に離別した母を想いながら、親鸞上人の教えを極めて広めていく様子が、せつなさをともないながら描かれています。
本当は、目の隅にもはいらなかったような寺が、どんどん大きくなって、世間に影響をおよぼすようになっていく段階では、かなりの圧力や政治的な対立も生まれたことも思います。
実際に比叡山などとの激しい対立もあったようですが、ここではそのようなえぐい内容的には触れていません。
あくまでも子供でも素直に読みやすい構成になっているので、これで興味をもったら五木 寛之さんの作品をはじめとして、もっと詳しいものがあるので読んでみるといいのではないかと。
ひとりの寂しがりの幼子が、波瀾万丈の人生の中でここまで環境を変えていくのには、どのような心情や想いが支えていたのかということにうたれる作品です。
「やしょめの歌」が全体的なテーマとしてバックグラウンドに流れています。
単純そうな童歌を蓮如上人が自分なりに咀嚼して、意味の深いものとして捉えていくのがおもしろい。