大地の子

国内小説

大地の子〈1〉 (文春文庫)

以前にパール・バックの「大地」とうっかりチャンポンしてしまいめげて一度放置したのですが(どちらも一昔前の中国の話なので気づかず交互に読んだw) 全4巻読み切りました。 かなり深い話です。

大きな流れは「中国残留孤児」「文革からの中国」「宝華製鉄建設までの日中共同作業」の3点かな。

お恥ずかしい話、ニュースで中国残留孤児に関するニュースなどを目にしても、いまいちよくわかっていなかったのだが、この話を読むと、それが意味するものの深さがよくわかる。
そして、なぜそこまで根強い反日精神があるのかも。。。。

その昔、「ラスト・エンペラー」という映画に非常に心を動かされたものですが、今にしてようやく本来の内容がみえてきた気がします!

非常に悲しかったのが、残留孤児に対する日本の対応ですね。
もし、個人が動かなかったらどうなっていたのでしょう?
戦争は確かに多くの悲劇を生みます。そこから立ち上がるためにどれだけ大変であったかは、戦後の我々にははかりきれないところもあると思います。

しかし、恵まれない土地で貧困にあえぐ国民を「お国のため」と半ば強制的に異国へ送り出し、形勢不利になったらそれをおとりとして、撤退し、わざわざ逃げ切れないように逃げ道を塞いで見殺しにする。
これ自体がまるで自国による大量虐殺のようなものですが、その後の対応がますますまずい。
まるでそんな人々など存在しなかったのように。

兵役にかり出された人も、異国へ開拓団として送り込まれた人も、自国内で耐え忍ぶ人も同じ人間、同じ国民なはず。それをまるで汚点かなにかのように見て見ぬ振りで放置というのは不信感を煽ります。

本当に気づかなかったわけではないでしょう。実際に訴えでている家族や親類もいて、彼らが単独で行動を起こし始めてもまだ目をつぶっていたこの国は。。。。。

そして「開拓団」というキーワード。これはあくまで日本側のいい分なんですよね。

突然「侵略」してきて土地を奪い、そこで生活していた人々を追い出して勝手に「開拓」する。
中国側からしたら、野蛮な侵略者の群れなわけです。
その厳しい土地で貧困にあえぎながらカツカツの生活をしてる人々を、同じ立場の人間が苦しめるという矛盾。
他にも戦争という狂気の中で、いろいろひどい仕打ちをしてきた日本という国の人間はまさに「鬼」のように見えたでしょう。

憎しみの渦巻く中に取り残された、身を守るすべも知らない幼い子供たちの運命がどうなるかはほぼきまったようなもの。
結局は弱い立場のものたちが、背負い込めないほどの重い荷物を、つぶれそうになりながら背負い込んでいかなければならない悲しい現実がそこにあります。

そんな状況から手をとりあって共同プロジェクトというものがよく成立したものだとつくづく思います。
深い溝を残したまま進めていかなければならないその作業には、とてつもない苦労があったでしょう。

最近、諸事情から地域は限定されますが、中国と行き来することが増えています。
その中で、現在でも非常に違和感を感じることが多くて、私はこの国では生きてはいかれないなあと思うことがしばしばあります。やはり自分は日本人なんだなと。

飛行機で数時間の近い距離で、姿形も似ている民族ですが、思想や考え方などの精神的な距離は果てしなく遠い。

長い年月をかけてそれぞれが独自の歴史をきざみ、それぞれ異なった風土ができあがっている。
それが祖国というものなんだろう。

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