ツタンカーメンの妻の物語を読んだところで、次は本人!
。。。と思ったが、これはツタンカーメン王そのものの話ではなく、発掘した考古学者ハワード・カーターの物語であった。
エジプトにちょっとでも興味がある人ならこの名前を聞いたことがあるだろう。当時のモノクロ写真も有名だし。
けれど、どのような経緯でいかにして発掘に至ったかは意外と知られていないんじゃないかな?
自伝も出版されているけれど、漫画の方が抵抗なく読みやすい。
山岸さんの作品は、どこか霊的、神秘的に脚色されたものが多いのだが、この作品は多少そういうところはあれど、現実味の強い仕上がりになっている。
発掘作業には当然多くの人材、日数、機材などで莫大な費用がかかるうえに、かならずしも成果が上げられるわけではない。
孤独と、運と、厳しい気候と、忍耐との戦いである。
この作品は、そんな長い年月の苦労と数多くのトライと不毛、彼をとりまく人間関係を描き出している。遺跡をひとつ掘り当てるのがどれだけ大変なことであるかがよくわかる。
エジプト旅行から帰ってきてから読んだのだけれど、実際にこの目で見てきた情景が次々に広がり臨場感があった。
ツタンカーメンの墓にも入ったし、狭い玄室いっぱいの棺や本人のミイラも見てきた。
考古学博物館では、まさに何重にも棺を覆っていた黄金の厨子たち、同じくさらにその内部に入っていた、マトリョーシカのごとくだんだん小さくなる人形棺も見た。
カノポスの壷がおさめられていた、守るように手を広げた像たちが囲む厨子もみた。
その他装飾品の数々やアヌビス像なども。。。
もちろん有名な黄金のマスクも立派なものでしたが、それ以上に目を惹いたのが多分3番目の人形棺。漫画の中でも
「まるで魂が宿っているいるように見える」
と言われたように、眼が非常にリアルで生々しかったのです。
直接見た現物、現地と、発見当時の様子がオーバーラップして、なんともいえない感動が新たにわき起こってきました。
確かに王家の谷にある他のファラオの墓に比べたら、それはそれは小さなものでしたが、やはりファラオの権力というのは大変なものだったんだなあと認識できました。
この漫画はエジプトへ行って実際に見た人は、より強く感じるものがあると思います。