チェ・ゲバラ伝

ノンフィクション

増補版 チェ・ゲバラ伝 (文春文庫)

1月のはじめに映画「チェ 28歳の革命」を見に行って、この人物に非常に興味をもった。

ほんと、誰だかもどんな人かもわからずにまったく無知な状態で観たもので(--;)
しかし、それでも何か感じるものがあったので、第二部の「チェ 39歳 別れの手紙」を観る前に知識があったほうがきっとおもしろかろうと。

現在新旧含めて、この映画のおかげで書店に関連書籍を集めたコーナーができてたりもしますが、無の状態の人はどれから手をつけたらいいのかと(^^;)いろいろ口コミなどを見て、この本を選びました。

結論から言うと

「チェ・ゲバラの入門書にふさわしい!」

小説でもないので、そうおもしろおかしいものではありませんが、比較的読みやすい本であるといえます。
映画にはなかった、彼がどのような生い立ちのもとに革命家への道をたどっていったか、どのような思想や経験が彼を革命家へと走らせたのか、そういったところからつかめます。

また映画では、友好関係やどういうつながりなのかよくつかめなかった仲間たちとのつながりも見えてきて、名前が単なる記号ではなく血肉をもった人間として感じられてきます。

そして「チェ」が決して名前ではないことも(笑)

革命に着手してから、実際にキューバ政権を握るまでの行動は、映画を観た方が状況を描きやすいかもしれません。
私の場合は先に映画をみたせいで、本を読みながら情景がまざまざと頭によみがえってきました。

そして、映画ではところどころ挿話のような感じでちらついていた、政権を握った後の彼の様子や演説。
たぶん2部ではまたそんな詳しくやらないのだろうなぁ。
キューバの重要なポストについてからも精力的に動き続ける彼の様子がよくわかります。
結構親日だったんだ。。。日本に強い関心を抱いていたんですね。
それなのに自国の発展に手いっぱいで、まともに向き合えなかった高度経済成長の我が国の事情。なんだかせつないですね。

第二部の主題となる「別れの手紙」についてもちゃんと翻訳転載してあります。そう、ここからは予習。
革命後、主導権を握ったものはだいたいそのまま国の中枢部となり、そのまま国のために力を尽くして骨を埋めるか次の勢力に追い出されるかだと思うんですが、なぜそこでカストロとゲバラは違う道をとることになったのか?

ここに彼の考え方の特殊さがにじみでてくるんですねぇ。
そう、元をただせば確かに彼はキューバの人ではありません。しかし、それだけではない。「自分の国」という意識が彼にはあったのか?
もちろん祖国への思いや家族への思いもあったでしょう。しかし、それ以上に彼の信念が、理想が、彼をまた、まったくの別天地へと運んでいったのです。

革命家というと、なんか血なまぐさい印象がありますが、彼の行動はある種の宗教家のようでさえあります。
大きな理想の前には自分の命などたいしたものではないとあっさり投げ出しながらも、負傷した仲間一人のためにも安全を投げ捨てて自ら窮地に立つ。
もともと名家に生まれた医者というエリートであるのに、そういうすべての名誉を投げ出して、圧政に苦しんでいる人々を救うために見知らぬ土地へ放浪する。これってなにかに似ている。。。。

こういうところがあるから、きっと彼は長く多くの人に感銘を与えて愛されるのでしょう。

しかし運命は残酷なもので、革命を成功に導く条件は多く揃っていながらもキューバの時とは大きく異なるところがありました。
それはやはり「民衆の心」でしょう。いくら他国の人や一部の人間が叫んでも、その土地に住む人々が一体になって動かなければなんにもならない。
そう、キューバ革命の時は、現状に耐えきれなくなった人々が喜んで迎え入れ、進んで協力していった。
けれど。。。?

理想と現実はなかなか一致させることは非常に難しい。誰が悪いとも言えない。それぞれがそれぞれの環境の中で、生きるために必死であったこと。
それにしてもとにかく、彼が尊敬に値する素晴らしい人格であったと思います。マネしてなれるもんじゃない。。。

ちなみにボリビア潜入次期から、偽装のためか名前が非常に入り乱れてきます。呼び方がまったく異なって「誰だ?誰だ?」となることもあるので、映画ではここんとこどうするんだろ。

予備知識をおおむねつかんだところで、彼の書いていた日記や、著作を読むとまたおもしろいかもしれませぬ。

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