ジーキル博士とハイド氏 (田中 西二郎訳)

海外小説

ジーキル博士とハイド氏 (新潮文庫)

話を知らなくても、この二人の名前が意味するものを知ってる人は多い。
昔読んだ覚えがあるんだけど、細かい内容は忘れてしまったので、読み返してみた。

まぁ、ちょっと内容に触れても、もはやネタバレにはならないと思うのだが。
ざっくり言えば、地位も名誉もあるジーキル博士と、極悪残忍なハイド氏という2重人格の話です。

すでに内容に想像がつきながら読んでるので、ミステリーとしてはネタバレなのだが、ただ一人の人間の中に違う性質が住み着いているわけではない。
他人からみても同一人物とは思えないというところが特徴的だ。

ジーキル博士自身は、別にものすごい心清らかな善人というわけでもない。
ただ、社会的地位とか、周囲の目とかに阻まれて、自分を抑圧しつづけてきたストレスやプレッシャーが、そういう方向に行かざるを得ない状況に追いやってしまったのだろう。
最後のジーキルの陳述書によって明かされる事実は、哲学的とも言える。

ハイド氏は、観念の権化のようなもので、人の形をしたものでありながら、もはや人間でさえなくなっている気がする。

心の病に苦しむ人が多い現代社会こそ、こうした作品の意味するものが汲み取れるのではないかな。
非情に短い短編なので、さっくり読み切れてしまいます。

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