クリスマス・カロル(村岡 花子 訳)

海外小説

クリスマス・カロル (新潮文庫)

かなり以前から存在は知っていたけれど、クリスマスに適した児童文学のような意識を持っていて読んだことはありませんでした。

しかし、年末に3Dの映画でやるというのが気になって見に行ったところ、いやいやこれは子供向けというより大人に対して深く感じさせるところがある話だなと。時間の限られた映画では不明な点もあったので原作を読んでみたくなりました。

夢に溢れた期待膨らむうきうきするような楽しいクリスマス。
キリスト教の聖なる厳かな夜の物語。

と、いうイメージとはだいぶかけ離れた内容です!!
まあ教訓めいたところもありますが、人間の欲やエゴ、金銭至上主義というものが、心を貧しく視野を狭くすることによって、本人も気づかぬうちに精神的な喜びや楽しさを失って人生をつまらないものにしてしまう怖さ。

同じような生き方をして生涯を終えてしまった仲間が、クリスマスの夜直前に激しい後悔を訴えに現れるところから恐ろしい旅がはじまります。

謎の亡霊たちに導かれて、過去、現在、未来の自分をとりまく周囲の様子を眺めることになるのですが、この間に変化して行く心の動きと、それぞれの亡霊の描写がおもしろい。
余命も限られた時間の中で、果たして人間は変わることができるのか?

惜しむらくは、映画の中で疑問に思ったことが原作でもはっきりとはつかめなかったこと。
それは、いつ、なにがあって、スクルージはあのような人間になってしまったのか?
伏線は確かにいくつかあるのですが、青年時代まではもっと人生も楽しむことを知っていたように思われるので。。。

それでも長年愛読されて来ただけあって、とてもおもしろい著作です。ページ的にも短いし、夢中で一気に読んでしまいました。

タイトルとURLをコピーしました