陰陽師 鉄輪

時代物フィクション

陰陽師―鉄輪(かなわ) (文春文庫)

原点を辿ればもともと「鉄輪」は能の演目として歴史が古いようです。
安倍晴明に相談を持ちかけるのも原点からですが、そこに源博雅もからめて夢枕 獏節に仕上げた
2000年出版の『陰陽師 付喪神ノ巻』に収録されている「鉄輪」
2003年にさらに肉付けして383ページある長編に仕上げた「生成り姫」
その後映画化されたりドラマにもなったりしましたね。

なんども読んでいるけれど陰陽師シリーズの中でも突出して一番大好きな話がこの徳子姫の話。
これだけちょっとずつ手を加えて変わりつつも、長く愛されているのだからやはり気に入ってる人も多いのだろう。

「生成り姫」の方は、ここに至るまでの経緯や登場人物の相関図や感情の推移がこまやかに記されていて、さらに情緒深く涙を誘わずにはいられないので、この絵本で興味を持ったら是非読んでいただきたい。

人間であるが故の苦悶、悲しさ、妄執などが浮き彫りにされている。男女の情念の凄まじさ。
これはまさに大人の絵本であり、子供には読ませられない(^_^;)

頭では理解していても、心は従えることができない。
割り切ることができずに悶え苦しみ、堪え忍ぶことも出来なくなった時、、、
心情を映しだした唄がまた、物悲しく心に響く。

昔話や地獄絵などでは鬼といえば虎皮パンツの男型であるが、やはり鬼になるのは陰である女性こそ相応しい。

「瘤取り、、」と同じく村上さんのシンプルな絵と共に進むのだが、ひょうきんな雰囲気のユーモアさはなく、妖しく闇を感じさせる内容に沿ったものになっている。
同じタッチなのにこうも変わるのかと驚きである。

もうひとつ、この話を舞踏劇の脚本とした「鉄輪恋鬼孔雀舞(かなわぬこいはるのパヴァーヌ)」も収められている。
内容的には「鉄輪」だけではなく「生成り姫」の方にまで踏み込んだストーリーになっていて、実際に舞台上演されたそうです。
観に行った人のブログなどを拝見すると、能よりは軽やかで現代的な感じだったのかなと。

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