各地域、各時代の死後観の概略を、わかりやすく完結にまとめてあるので比較もしやすい。
ただし、あくまで概略であり、これで全てを理解することはできないだろう。
例えばいま読み進めている「神曲」の世界観などもあるが、びっくりするぐらい省略されている(笑)
どの思想も本来1ページで述べられるようなものではないと思うので、そこはこれで興味を持ったものを各自拾い上げて掘り下げていけばいいのだろう。実際、今山積みされている本たちが読み終わったら読んでみたいな〜と思えるものがいくつもあった。
とはいえ、大枠を掴むのにはよくまとめられていると思う。正直ぱっと見た時には挿絵もなんとも漫画チックであまり期待はしてなかったのだが、思った以上に良書であった気がします。
信者数の多い現在主流となっている宗教だけでなく、少数派や独自の変化を遂げた地域性の強い思想なども数多く包括しているのが非常に興味深い。結構知らなかったものがありました。
また、地域が離れていても、死後の世界の観念が非常に似ていることに注目したい。
これは、文明の伝播と共に思想も流入してると考えられるのだが、根本的に現世では満たされない思いに一縷の救いを求めたい、自分を虐げ苦しめた者は別の次元で報復を受けると思いたいといった願望は誰でも持っているものであろう。
空は明るく広く開放感があり、地底は暗く冷たく息苦しいという感覚的な印象も、天国と地獄のある場所と直結しているようだ。(区別しない冥界という考えもあるけれど)
古代宗教などは、シンプルなのだがそれだけに地域の特色が現れやすく、おもしろい。
大陸はまだ伝播しやすかったろうが、離れた島国などでは他にはない独自な思想が育まれていたりもする。
時代と共に交易も盛んになり、ますますいろんな地域からの文明や技術、思想が流入して、さらに共通点も増え、そこからさらに独自の思想が加わったものが派生して複雑に細分化されてくる。
同じ地域でも時代によって、その時の風習や世情に合わせてどんどん改変されていったのだなあというところも見えてくるのがおもしろい。
特に信仰心のない人でも、天国と地獄と言えば漠然としたイメージが浮かぶのではないだろうか。
信じるか否かにかかわらずとも、それだけ魅力のある考えなのだろう。
それに天国のイメージというのが、これまた非常に俗世的で、表現は違っても人間の欲望を全て満足させるような贅沢なイメージであるものが多いのも、結局は人間の幸せというのはそこなんだなと(笑)
巻末に仏教の十六小地獄の解説も載ってます。これがまたなかなかおもしろい。
「衆合地獄」などは性に関わるものだけど、昔からこういう嗜好はあったものだなと。。