唐草物語

国内小説

唐草物語 (河出文庫―渋沢龍彦コレクション)

小説ともエッセイとも言いがたい不思議な著作。この作品で、第9回泉鏡花文学賞を受賞している。
そういえば、こないだ読んでいた「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」の翻訳者、矢川澄子さんは澁澤龍彦氏の奥さんじゃないですか。奇遇な(ーー;)

この著作は、最初は博物誌などのように、古今東西国内外の人物を資料に基づいて紹介してるのだが、途中から想像力はどんどん飛躍して澁澤流創作小説のようになる。
なので、知識と物語と2つの味が楽しめるおもしろい構成。

「鳥と少女」は、造形として対象を愛するという画家ウッチェロの話だが、その対象が人間であった場合の物悲しさ。
「火山に死す」などは、やはり先日読んでいた「テルマエ・ロマエ」と重なる部分があっておもしろかった。ウェスウィウス山の噴火という再災害を目の前にして、風呂隙のローマ人、プリニウスのとった行動とは?
「三つの髑髏」は、花山院と安倍晴明の話であるが、話の中で二人がどんどん年を取って変わって行く様が変わっている。

幻想的な短編が揃っているので、彼の作品のなかでもさくさくと読み易く、「澁澤作品って、なんか堅苦しくて」という人にも、なかなかおもしろい作品です。

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