魔界転生〈上〉

時代物フィクション

魔界転生 上 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)

かなり古い小説ではある(同じ角川でも所持してるのは昭和56年発行)。この題名を聞いた時に、若き日の沢田研二が白塗りで飛び回る場面を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか(笑)

本当は直前にダンテの「神曲」を読み始めたのだけど、どうも疲れがたまっている時にこういう内容は頭にすすっと入ってこない。
こういう時は思いっきり娯楽色の強いもので軽くほぐそう。。と思って何気なく本棚から抜き取ったのが、この「魔界転生」。
んが!何気なく目次を目にした途端「もしや、これって”神曲”へのオマージュか!?」と。ま、上巻の目次だけだったんですが(笑)
何度も読み返しても新たに発見することって、いろいろありますね。

とりあえず、歴史を背景とした伝奇小説です。
死んだはずの有名な人物たちが、死亡時の姿と記憶そのままにこの世に蘇る。
忍術というより、仙術に西洋の黒魔術のエッセンスを加えたような感じもする。
しかし蘇りの源泉となるのが、押し隠されてきた強い憎しみや野望などどす黒い感情であるために、魔界に堕落した冷徹残虐な感情のみを残して。。。

おもしろいのが、こうした感情や、超人的な身体能力等はこの世の者ではない魔物なのであるが、体は生身の人間であるという設定。
完全なゾンビじゃないのがミソ。

出て来る登場人物が、これまたバラエティに富んでおり

小西行長、真田幸村に従い、島原の乱で幕府に対抗した、森宗意軒
江戸時代の軍学者、由井正雪
島原の乱で総大将に担がれた、若きカリスマ天草四郎
鍵屋の辻の決闘で知られる、剣豪 荒木又右衛門
親の仇討ちに生涯をかけたと言われる、田宮坊太郎
『五輪書』も書いたみんなが知ってる、剣豪 宮本武蔵
宝蔵院流槍術を完成されたと言われる、槍の名人 宝蔵院 胤舜
将軍家指南役「江戸柳生」、柳生宗矩(長男に十兵衛)
尾張徳川氏の兵法指南役「尾張柳生」、柳生利厳(如雲斎)

それに片目の風来坊、柳生三厳(十兵衛)、キリシタン大名小西行長ゆかりの人物、根来衆や伊賀ものなどの忍者や徳川幕府の権力争いなどがからんでくる。
エログロなところもあるが、非情にテンポよく話がすすんで読む者を飽きさせない。

上巻では、選ばれし者たちが蘇るまでの推移と、柳生十兵衛たちとの初期の対立までを描き、下巻へ続く。

それにしても、山田風太郎さんは柳生一族好きだよね。他にも主役とした著作がある。

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