題名をパっと見た時に、サドの「悪徳の栄え」が連想されたのですが、それほどには荒廃していませんw。
世の中を斜めから見てるものが多い島田さんの作品にしてはかなりの直球です。
ロシアがらみの異国的な雰囲気をぷんぷんさせてる島田さんにしては、純和風なのも珍しい。
過酷な敗戦後の世の中を生き抜いて行く人々の姿。。。。というと堅苦しく思われがちですが、非常に読みやすく、戦後を知らない世代でも当時を身近に伺い知ることができる素晴らしい作品です。
絶望や裏切りやだれもアテにはできない世の中でも人は生きて行こうとする。
これは大空襲を受けた東京で、生き残った2人の性格の異なる姉妹が、どのような思いを抱えてどのような道を歩んでいったかを描く作品です。
このあたりの設定もサドのジュリエットとジュスティーヌの関係を思わせるのですが、違うのはこの姉妹が一蓮托生で手をとりあって生きて行くということ。
女だけで家を守って行く事の難しさ、また、生きて戻って来た特攻隊員の心にひそむ闇など、目をそらしてはいけない問題なのだと思う。
そういえば先日、ふとつけたTVで水木しげるさんがご自身の戦争体験を語られていました。
あまりにもひょうひょうとしていて、暗さを全然感じさせない語りなのですが、前線に駆り出されて部隊は全滅。水木さんも片腕を失うという非常に過酷な体験をされているのですね。
偶然の幸運でも生きて帰ってくると責められる。今からでも死ねといわんばかりの扱いを受ける。狂った世の中ですよね。
この作品を映画化しようという運動もすすんでいるようです。島田さん自体がたびたび俳優としても活躍されているので非常に楽しみです。
あと、注意事項。内容の関係上、からみのシーンはあります。大人むけの戦後小説です(^^;)