日本を代表する、苦難の歴史で耐え忍んだ女の話といえばまず浮かぶ「おしん」
しかし、昭和の時代に入っても、貧しさゆえに最下層と呼ばれる生活で地獄を生き抜き、あるいは命を落とした人たちはまだたくさんいた。
舞台となっているのは室蘭。
どこかに立ち寄った時に、北海道開拓の歴史については学習し、過酷な環境であったという認識はあったが、まだまだ認識が甘かったようだ。
口減らしに加えてわずかな一時金を貰うために、まだ幼い我が娘を遊郭の女衒に引き渡す親達。
商品としての値段をつけられた女達には自由も人間の尊厳もなく、死ぬまで酷使される家畜以下の「モノ」。
貧困の育ちゆえに綺麗な服や食べ物に憧れた子もいたかもしれない。しかしその代償はあまりに大きく、取り返しのつかないものであったかもしれない。
生きるってなんだろう。
選択の自由などなく、逃げ出すことも出来ず、心を殺し耐え忍んで命をつなぐか、自ら命を絶つかの二択しか存在しない世界。
何かしらの夢や理想や強い目標を持って自ら選んだ仕事であるならまだしも、ただただ人の欲に翻弄され続け、使い物にならなくなったらガラクタのように捨てられる人生に希望は見いだせるのであろうか。
耐え忍んだ先に光は見えるのだろうか?
それでも生き続けるために、縋るものや野望をいだかなくてはならなかった悲しさ。
室蘭の鉄鋼業の繁栄とその裏側にある闇。
戦争へと突入していった結果、さらに口を開けて待っていた狂気の世界。従軍慰安婦として送り込まれた末路とは。
不安と恐怖を押し込めるために、人間は進んで洗脳され、踊らされ、狂信的な信仰にむしゃぶりつく。
自分より弱い者を作り出そうと必死になって、他人を貶めていく醜さ。
人間の持つどん底の強さと恐ろしさを深く掘り下げていく、重いけれど語り伝えていく必要を感じる良い漫画だと思います。