読んだ時に「二番煎じ」と感じた人もいるのではないかな。
何の?と言えば「陰陽師」。
空海も呪術的な伝説が数多く残る、謎多き人物であるから似てくるのも仕方ないのかもしれない。
ただ、それに加えて空海と橘逸勢の関係が、どうにも安倍晴明と源博雅にかぶるのです。
飄々として不思議な技を操る主人公と素直で人の善さが滲み出る相方というキャラ。。。
内容は真言宗の開祖、弘法大師とも呼ばれる空海の物語です。
この第一巻では、遣唐使として唐入りした空海が、密教の秘技を極めたいと願いつつもなかなか門をくぐらず、遠回りをする。
ざまざまな人々と関わりを持ち、周囲で巻き起こる不思議な現象に対応していくといった具合にはじまる。
基本的には策謀家はあまり好きではないんですが、手の込んだことをするわりにはあっけらかんとしたところがあって憎めないですね。
実在的な人物伝ではなく、怪奇現象や呪術的な面を強調した空想的な小説です。
哲学的な問答等も含まれ、エンターテイメントとして素直におもしろく読めます。
個人的には巻末についていた対談の再録が非常に興味深くておもしろかった。
独自の新解釈や斬新な視点を持つ、人類・宗教学者でもある中沢新一氏、実際の真言宗・徳島の般若院の住職でもある宮崎信也氏に、空想小説の夢枕獏氏ですよ?この組み合わせがおもしろくないわけがない。
日本人の宗教的な心と、そこにうまく溶け込む空海という人物のおもしろさが、さらに伝わって来ます。