徳川家康(1) 出世乱離の巻

歴史(日本)

徳川家康(1) 出世乱離の巻 (山岡荘八歴史文庫)

決して新しい本ではありませんが、長く愛される名作です。

大題は徳川家康になっていますが、実際には織田信長の幼少時代からの多人称で描かれる、かなり長い時代をカバーした通史になっています。だからこんなに長いのだな(ーー;)書く方も18年かかったらしい。

元々わたしが好きな武将が織田信長、上杉謙信、伊達政宗、真田幸村などであったため、あまり家康には興味をもっておりませんでした。
相方が所持していてボロボロになるまで読み込んでいたのですが、わたしは量の多さもあって長い事手をつけなかった。
ちょうど周囲に読む本がなくなったので、何気なく手にしたのですが、いやはや結構おもしろい!
家康の一生だけかと思ってたらそうじゃなかったのがまた良かったのかな。

民を背負う身でありながら、自分のたつ地盤を失い、今川家に忍従していた日々。周囲の思惑にあやつられて人質にまわされる幼少時代ではあったけれど、誘拐という形で信長のところへ送り込まれたのが後に大きな影響力を持ってくるのだから人間の運命なんて本当にわからないものですね。

しかし自分たちの領地と言えるものもないのに家康を信じて耐え続けた三河の民の根性は本当にすごい。
良い家臣と強い民に支えられてこそ人生があったのだなぁと。
あっさり割り切る信長やちゃっかり自分の気に入った女性を取り込んで行く秀吉とはまた違って、女関係は本当に不器用な人だ。望んだ婚姻ではなかったにしろ、築山殿をうまく扱えなかったのはやはり彼ならではのところもあるだろう。
この本では築山殿がかなりどうしようもない女性のように見えてしまいがちなのだけれど、
ちょっと可哀想な気もする。(^^;)旦那の扱い方ひとつでもっとなんとかなったのではなかろうかと。。。

当時は名のある武将や大名の間では結婚というのは国の存続につながる政治的な意味が強かったから、どちらも好き嫌いうんぬんなどの自由はない。とはいえ人間ですから感情はいろいろあるわけで、大奥などに代表されるような大名の奥座敷ではかなり激しいせめぎあいがあったのも当然の事。

前半のスピード感とは対照的に、後半は家康の行動や思考をじっくり追っていく内容になっています。

特に大阪攻めがはじまってからが非常に長い!!関ヶ原の戦い以降も冬の陣と夏の陣の間の家臣や家康との考えの食い違いや葛藤が細かく描写されています。

もちろん、実際には何を考えていたか、どういう感情であったのかなどの資料が細かく残っているわけでもない。ここは作者の感情移入も大きくはいっているとは思うので、鵜呑みにはできないのですが。。。

摩訶不思議な行動パターンや空白の期間が見事に描かれていて説得力があります。司馬さんはおそらく家康という人物が大好きなんだろうなぁとも感じるのですが(^^;)

そして、私の大好きな伊達政宗公も大いに動き回ってましたっ(笑)

まぁ、この小説の場合は、足を引っ張りまくって余計な邪魔立てばかりするので、あまりいい印象にはなってないのですが。。(--;)

それでも、やはり非常に機転の利くおもしろい人物であることは否めないなと。

所帯がおおきくなればなるほど、手足のようには自由がきかなくなってくる。そんなもどかしさも現在の会社にも当てはまる面があるのではないかな。

徳川家康という人間の生涯を覗き穴として時代の流れや風俗が生き生きとみえてくる読み応えのある書籍です。

タイトルとURLをコピーしました