ポトマック―澁澤龍彦コレクション

海外小説

ポトマック―渋澤龍彦コレクション   河出文庫

この文章の意味を「理解」しようと読み進めていくと、とてつもなく難解で、同じ所を何度も読み返しては考えこむどつぼにはまってしまう。
抽象画や見知らぬ記号を眺める感じ、意識を向けなくとも流れ続けるBGMのような感じでさらりと読んでいくことにした。

前半は、精神分裂社の謎めいた告白のようでもあり、とりとめなく続く理不尽な夢のようでもある。

「ウージェーヌ」が形を持ち始めてから、ちょっとおもしろくなってくる。
挿絵はとてもかわいらしくシンプルなのだが、それは「私の」ウンジェーヌではなかった。
おそらく誰でも個々に自分のウンジェーヌを持っているのではないだろうか。

このウージェーヌのアルバムの後からは、ふわふわとおぼつかない足取りながらも、まっとうな文章として話は流れ始める。
そう、ようやく小説っぽく、戯曲っぽくなってくるのだ。
中には詩や対話形式なども含まれる。

ポトマックは、ウージェーヌの一種なのか?
いや、そもそもウージェーヌがポトマックの一部なのか?
またはポトマックもウージェーヌも「僕」の影なのか?

ある意味芸術的な本なのかもしれないが、繰り返して何度も読みたいか?と言われると、しばらくは御免被りたい。
と、いうところで評価は低めになったが、また時間を置いて再読してみたら – 様々な経験を積み歳を重ねて、あるいはその時の精神状態で – 違う印象を受けるかもしれない。
そんな気のする著作でした。

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