バスティーユ投獄中に書かれたものらしいが、サドの作品にしては精彩を欠いてるなと感じました。
この「ソドム百二十日」に関しては、ぶっちゃけ最後まで面白みを感じられなかった。
作品的には、ありあまる財産と、傲慢で冷たい魂を持った4人の権力者が、この世でもっとも悪徳に満ちた宴を催す物語の「序章」といったところ。
飽食、淫蕩、冒涜、堕落、醜悪、外道、頽廃、陰惨、男色、非道な犯罪などなどお決まりのキーワードが満ち溢れ、その逆の美徳、慈善、気品、愛らしさ、優雅さ、貞淑さ、信仰心などを対比的に描いているのではあるが、いかんせん登場人物が多すぎる。
そのため、いかに言葉を尽くしてもちょこっと表現を変えただけの似たり寄ったりといった印象になってしまい、単調で限界が感じられる。罵詈雑言も美辞麗句も極まれりといったとこか。
しかも説明的になってしまい、サドのおもしろさである思想的な面があまりでていないように思われる。
おそらくここから実際の阿鼻叫喚の宴が始まるのだろうが、本書はここでぶった切られているのでなんとも歯切れが悪い。
鬼畜官能的な描写はふんだんに盛り込まれているが、「これでもか!」と言わんばかりの外道ぶり。
これでは普通に俗悪な淫靡小説のようで、特に女性が読んだら非常に嫌悪感と胸糞悪くなる思いだけが残るだろう(笑)
はじめてサド文学に触れるという人には、個人的にはおすすめできないなぁ。
他に短編で「悲惨物語」と「ゾロエと二人の侍女」がおさめられています。
「悲惨物語」は短篇集である「恋の罪」に収められている話で、こちらの方がはるかにおもしろい。
一種の源氏物語といえようか、いや、実際にはそれ以上なのだが。。。
ある立場の人間を、手塩にかけて、ひたすら自分の好みの女に育て上げて全愛情を注ぎ込むという。。まあ倒錯した愛の物語なわけです。
問答や自問などに当時の社会背景や反発心、善悪の観念や社会通念に対する疑惑などが現れていておもしろい。
序文と最後の急展開がとってつけたようで非常に胡散臭いのですが(笑)これも投獄中に書かれたものということで、いろいろあるのでしょう。。。
「ゾロエと二人の侍女」は、以前サドの作品として扱われていたようですが、現在では他者の手によるものと言われています。
確かにサドにしては「アク」がない。控えめで奥ゆかしいほどだ。
最初は大仰な喜劇のような感じだが、最後の方はおもしろくなっていった。
ナポレオンが台頭して来る時代の、実在の人物をモデルにした皮肉などが含まれているようなので、時代背景を知っていて読むと結構含み笑いができてしまうのかもしれません。