この美しく残酷で狂気にまみれた世界が、何故か強く心を惹き付けてやまない。
単に面白い、面白くないではなく、最近の中ではもっとも大好きと言える漫画だ。
時はフランス革命前のパリ。
主人公は死刑執行人。
当時なくてはならない職でありながらも全ての民から忌み嫌われ、蔑まれ、徹底的に避けられ、うっかり接触すれば呪われるとまで言われた死神扱いの職業。
それゆえにこの家に生まれたものは家業を継ぐ以外に生きる術はなく、他国に逃げることさえ許されぬ。
そんな影の世界に生きる一族の葛藤や悲哀がここまで描かれた作品はあっただろうか?
しかも史実に縛られない自由奔放で華麗な絵柄もまた良い。
それがまた独特の世界観を生み出していて、血膿にまみれていても気高く誇り高い。
もちろん動機や話の進行が全てこれが現実であったとは言わないが、歴史的に重要な事件はだいたい抑えてある。
ベルバラや数ある歴史小説などと突き合わせて読むと、当時の時代がなんとなく見えてくる気がする。
多分大きく好き嫌いが別れるところだとは思うが、今どきの可愛らしい萌え系が苦手な人間としてはツボにはまった。