ニッポンの、みせものやさん

Documentary

仙台近郊では、桜井薬局セントラルホールで、レイトショーのみで一週間という非常に限られた上映だった「ニッポンの、みせものやさん

映画『ニッポンの、みせものやさん』
ドキュメンタリー映画『ニッポンの、みせものやさん』(2012年12月新宿K's cinemaにて公開)『ソレイユのこども...

以前3DCGでからくり興行の様子を作るときに、関連で見世物小屋のことも調べてました。
そのときに、日本最後の見世物興行を行う「大寅興行社一座」のことも知って、見たことがあるという人たちのブログも興味深く拝見しました。
なので、そこにスポットを当てた記録映画というので是非見ておきたいなと。

見世物小屋の興行内容をじっくり見られるというものではなく、消え行く文化としての見世物小屋というものを記録して残しておこうとする試みの模様。

正直なところ、カメラや音響の精度もあまり良い状態とも言えず、カメラワークや構成、ナレーション等も、ホームビデオを見せられているような気になりました。
でも、目の付け所や内容は良い。

ドキュメンタリーなので特別な演出もなく、舞台の裏側や、移動しながら生活をする人々の様子が淡々と映し出されている。

仮設小屋もいまだ手作業で、自分たちで分割された材木を組み上げていく様子にはびっくりしました。
少ない人数で、しかもだいぶ高齢化してるので、これらの力作業はかなり辛い仕事だろうなと。。

見世物小屋で披露されるのは熟練した「芸」。
リアクション芸人もなかなかそこまでは出来ないだろうというような過酷なものばかりで、これは一朝一夕でできるようなもんじゃない。
当然アルバイトのような俄か人材も使えないし、後継者を「育てる」ことができなければ、受け継がれることもなく消えていくのは必定。

こういった見世物小屋が大繁盛して、多数の小屋がひしめきあっていたのも、戦後から私が生まれるより前だったようです。
娯楽が少なかった時代。人々は好奇心や刺激を求めて目を輝かせて見入っていたことでしょう。
映画やTVの普及が足を運ぶ人を少なくしてしまったとは。。。
DVDの普及でいまや映画業界も苦戦してるようですが、便利になるということは何かを失うことでもあるのですね。

「親の因果が子に報い~~」という口上も江戸時代からのものですが、以前は奇形として生まれついたものを見世物にしていたりもしました。
人権問題から次第になくなっていきましたが、ただ「ひどい話」という前に時代を読む必要があるでしょう。

貧しく、子沢山で、働けない者を養う余裕もない家庭。もしくは世間体をはばかってわが子を捨てる親。
そうした子供をもらってきて、衣食住を与え、養い育てて舞台に出す。そりゃあ本人の意思と無関係に背負ってしまった不幸な運命をさらし者にするということが道徳的にどうなのか?というところもあるのでしょうが、生きていくために誰もが必死であったたくましさは、無責任な一言で一蹴することはできないと思います。

現在でも、海外などに行けば、その体を人前に出してお金をもらって生きている路上生活者もたくさん目にします。ただ生きるということも過酷な場合もあるのです。

伊豆の踊り子などを読んでも、旅芸人というのはどうも低く見られていた感覚が現代でもまだ残ってるようで。。。
スクリーン上では直接的なことは言ってませんが、見世物興行を生活の糧としていることで、周囲から嫌な言葉を投げつけられたこともあるようです。

お化け屋敷などでも怖がって入るのを躊躇する子供に「大丈夫、大丈夫、本物は出ないから。全部ニセモノだから怖くないよ~~」などとあっけらかんと言っちゃうところは、詐欺や胡散臭さとは程遠いほほえましさもあった。
エンターテイメントな仕事が、一般的なサラリーマンより蔑まれるような感覚が逆にわからない。この世から娯楽が消えたらなんと味気ないことか。

見世物では生活が成り立たなくなったり、後継者がいなくなったりで、やめてしまった人の話も非常に興味深かった。
いずれ見世物小屋が日本から消滅する日が来ることを、大寅興行社の方も強く感じているようですが、やはりひとつの文化として消え去ってしまうには非常に惜しい気がします。
チャンスがあれば、是非この目で見たいなあ。

画面転換のつなぎが何であんなに間をあけたんだろう?というとこもありましたが、いろいろ感じるところもあり、人々の表情も自然で良いと思います。

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