パラドックス13

SF

パラドックス13

最近の東野 圭吾さんの作品の中ではダントツにおもしろかった。

が、一般的評価はあまりよろしくない。なぜだろう?と思ったら、どうも売り込み方法に問題があったのではないかと。(ーー;)

私は風呂に入ってる間に読んでいたので、帯も表紙もとっぱらっちゃってたのですよね。もとより内容に対しての予測や偏見がなかった。

で、後から見てみたら「数学的矛盾」だとか「予測不可能」だとか「なぜ我々だけ。。」といった言葉が強調されていた。

えーっと、ガリレオシリーズとはちょっと違って、数学的や物理学的などは、今回あまり重大なテーマではないと思う。また、「なぜ?」なんてのも、もう最初の方からヒントが出ていてバレバレ。言ってみりゃ、そんなとこは作者もあまり重視してなかったのではないかと読んで思いました。

答えや結果なんてものは、もうだいたい読めてしまう。
おもしろいのは、絶望の縁にたった時の人間心理の動きと、葛藤と苦悩、協調性や人それぞれの価値観の違いなどの心理描写の部分だと思う。

それだけに非常にわかりやすく読みやすかった。

食料も着るものも住む場所さえも失い、自然に翻弄されて休まる時も無い。
親しい、愛する人々はいなくなり、心のよりどころとしていたものは消え失せて、希望も将来も見失った時、それでも生き続けていく意味は?

感情に流されてばかりいては、過酷な状況を生き延びることはできない。しかし、理屈だけでは生きられない。

追いつめられたぎりぎりの精神状態の中で、見知らぬ他人同士が寄り添い生き抜くサバイバルゲーム。
そこには情愛と脆さと不信が渦巻く。

前半部分でほとんど内容的にはつかめてしまうし、生き残る人もだいたい途中の段階で読めてしまうのだけれども、そこにいたるまでの経緯と感情の動きを主体にした読み物だと思う。

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